16話 異変4
「はい、全てはノモルワ王国による侵略です。」
「ノモルワ王国…」
ノモルワ王国はこの大陸の北に位置する3つの王国の内の1つであり、3国の中で最も魔導騎士が多く、また、禁呪や違法な術の研究が盛んに行われており、それ故にアルバロス王国とは普段より仲の悪い国として有名であり、昔から小競り合いが絶えなかった。
さらに、この国は亜人排斥を常日頃から掲げており、度々エルフの森へ侵略を繰り返していた。
「そんな…今まで侵略をゆるしていなかったのに…」
「ここからは推論になりますが、恐らく例の魔物はノモルワ王国の研究の1つなのでしょう。」
「け、研究の1つと言うことは、アレは人工の魔物と言うことですか!」
「確証はありませんが、そう考えて間違いないでしょう。…人工の魔物が魔法も闘気通用しないと言うことは、既にその方法を知っているということです。そして、ノモルワ王国の魔導騎士の中には同じ事が出来る者がいると考えて間違いないでしょう。」
「そんな…では、ロッテを取り戻すことは…」
「我々(・・)では不可能でしょう。それどころか、この国も危ない事が予想されます。」
その言葉にアリアの顔は絶望に染まっていた…たが、ふとその顔が疑問へと変わった。
「い今、我々(・・)は…と、言われましたか?…と、言うことは可能な方が居る、と言うことですか!」
「はい、確かにいらっしゃいますが…」
「が…?」
「その方はとても気分屋ですので、やっていただけるかどうかは…分かりません。」
アリアは身を乗り出すようにしてレンに聞いた。
「どなたですか!?」
「それは、後の椅子に座られている方に聞いてみて下さい。」
「後ろ…?」
アリアが後を振り返ると、そこには…
神宮龍司が椅子に座っていた。
「本当に…ロッテと私達の国を助けられる方を知っているのですか…?」
縋るようなアリアに対して龍司は…
「さぁな…信じる信じないはお前次第じゃないのか?」
次の瞬間…
アリアは龍司の目の前行くと土下座をした。
「お願い致します!どの様な対価であっても必ずお支払致します!我が国を…我が妹を助けてください!」
その様子を静かに見ていた龍司は…
「…例えその対価が汝の身、魂であってもか?」
「勿論です!」
即答だった。
すると、龍司とアリアの周りを蒼い光が包み込んだ。
「では、汝の願いと対価を…汝の言葉にて告げよ…」
「私、アリア・E・エルフィー…この身のひとかけら、魂の魂魄の全てを賭けます!だから…だから…私の国と我が妹を助けてください!!」
「その願い…確かに請けた!」
その言葉と共に蒼い光が弾けた!
しかし、アリアの首には蒼い光の鎖のようなものがついていた。
「我は、覇者の1人…神宮龍司である。汝の首にありしは約の光であり、汝の願いが成就せし時、その光は本物の首輪となる。もし、願いが成就せぬ時はその光は消える。よいな?」
「はい…分かりました。」
そう告げた龍司はふと、顔を外に向けると…
「どうやら、目的の1つは直ぐに叶いそうだな…」
「え?」
「レン、王妃に会いに謁見の間へ行くぞ。ガルフォートは城壁へ向かっただろうから…誰かを遣って城外へ出ぬように伝えよ。」
「畏まりました。」
「ではアリア、行くぞ。」
「は、はい!…あ、あの…何が起こったのですか?」
一瞬、龍司とレンは視線を交わすと、レンは一礼して、部屋を出て行った。
そして、龍司は振り返って一言…
「なに、ノモルワ王国が直接攻めて来ただけだよ…」
「え!」
そして、龍司はニヤッと笑うと、もう一言…
「お前の妹を連れてな…」
相変わらず、会話が多いな…