罪深き天使 - 3
12/31 修正しました。
連合祭は、星薔薇学園女子部男子部が合同で行う新入生歓迎会のこと。毎年四月の下旬頃から男子部の生徒会と一緒に打ち合わせを始めて、約半月で企画を完成させる。
同じ学園内に存在しているからといって、女子男子部が一緒にやるイベントは本当に数少ないらしく、一般生徒は彼氏彼女を手に入れるため、血みどろの戦いを始めるみたい。
まあ私は死んでもそんなのに参加したくはないけれど、見るだけなら楽しいかもしれないわね。
…話が逸れたけれど、私は副生徒会長をしているため、それだけはサボることが出来ない…ああ、面倒だわ。
「だから、明日でもいいかしら」
「ん、いいよ。いつでも大丈夫だし、それに和音と一緒じゃなきゃ意味がないもん」
「ありがとう」
にこっと微笑んだ蓮奈に、私も微笑み返した。
蓮奈はまるで天使のようだ。慈しみ深く、優しい。元天使の私より、ずっと…。
「それにしてもさ」
「ん?」
蓮奈は少し口を尖らせて、
「新入生歓迎会なんて一緒にやる必要ないよね。和音に変な虫がついたらどーすんのよホント!!!」
「虫なんてつかないわよ。一緒にやるのは予算の問題だとか聞いたけれど…。でも、蓮奈にしたら嬉しいんじゃないの?合同で」
蓮奈は男子部に彼氏がいる。だからむしろ嬉しいんじゃないかと思ったんだけれど。
「そりゃね、一緒に行事ができるのは嬉しいよ?こんな機会滅多にないし。でも恭カッコいいから他の女子に囲まれちゃうし…」
「ヤキモチね」
「ちっ、違うもん!」
慌てて弁解する蓮奈を見ていると、ちょっと悪戯心が芽生えて、
「ふふ、そういうところが可愛いのよね、蓮奈は」
「からかうなー!!」
ちょっと虐めてしまった。可愛いって罪よね…。
ぷんぷん怒って頬を膨らませる蓮奈にクスッと笑いながら、男子部のある方角へ顔を向けた。…それにしても憂鬱だわ。この顔のせいで男どもは群がってくるだろうし…。昨年も散々だったって設定だしねぇ…。
「かーずねー、聞いてる?」
「…ごめんなさい、聞いてなかった」
気が付くと蓮奈が私の目の前で手をひらひらさせていた。ボーッとしていたら、蓮奈の話を聞き逃してしまったらしい。
「もう、ちゃんとしてよー!あのね、恭がその日、紹介したい人がいるんだって。男の子だけど…会ってくれない?」
「男ねぇ…蓮奈の知ってる人?」
「ううん、会ったことないけど。一ヶ月前に転校してきて、なんでか恭と仲良くなったみたい」
「へえ、あの一匹狼が仲良くする転校生ね…」
「興味ある?」
ひょこっと蓮奈が首を傾げた。まあ確かに…興味はある、わね。
「まあ、ちょっとは」
「じゃあ会ってくれる?」
「考えておくわ」
興味があるからといって、やっぱり男とは…あんまり関わりたくないし。でも強引な蓮奈のことだから、多分どうせ会う事になるんだろうけどね…。
「了解っ。じゃ、もう授業始まるから行くね」
と言いながら蓮奈はお弁当箱を持って立ち上がった。
「ええ、私も気が向いたら行くわ」
「はーいよ。じゃね」
にこっと小さな笑みを残して出て行った蓮奈。行動早…。
さて、と。
「連合祭…どうなることやら、ね」
星薔薇学園はほぼ独立した女子校男子校みたいになってます。交流は年に5回あるかないか…ぐらいです。