罪深き天使 - 2
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「…その美しさじゃ、周りが騒ぐのも仕方ないってもんでしょ」
「…好きでこんな顔じゃないのに…」
天使は皆神々しく、その姿も美しい。元とはいえ私もそのはしくれ。たとえ人間の姿をしていたとしても、その美しさは変わらないみたい。…自意識過剰じゃなくて、事実、よ?
「悪いけど、あたしはそんな美人じゃなくて良かったなー」
ズバッと言ってくれた蓮奈も実は無自覚なだけで美人。でもどちらかというと、可愛い、になるのかしら。
耳の横でツインテールにしている髪、パッチリとした人形のような目、少しだけ桃色に染まる頬に、白い肌。プルプルの唇は甘い果実のよう。
だから決して人気がない訳ではないのだけれど…。
「…蓮奈はどちらかというと男受けする顔なのよね…」
「え?」
「いえ、何でもないわ」
私の顔がどっち受けなのか分からないけれど…。まあ、どうでもいいわね。
それにしても、男に囲まれるのが嫌で女子校に入ったのに…女子にまで追いかけられるなんて思いもしなかった。…人間って恐ろしいわ。
「あ。和音、今日は一日サボり?」
「ええ、そのつもりよ」
「りょーかい。お昼にまた来るー」
「もう行くの?」
残念だわ。
そう言うと、蓮奈はニヤリと目を細めて、
「あたしはどっかの誰かさんと違っておバカなのでね」
「あら、嫌味ったらしく言うなんて…心外ね」
"上"ノ国の勉強に比べれば、"中"ノ国の勉強なんて赤子も同然。むしろこんなのが勉強でいいの?って疑問に思ってしまうくらいだ。それにさっきも言ったように、今やってる勉強なんて既に学習済み、だしね。人間達からしたら、フェアじゃないかもしれないけれど。
「じゃあ、後でね」
「ええ、また」
キィ、と屋上のドアが軋む音がして、バタンと閉まった。
…一人きりに戻った屋上は、可笑しいくらい静か。私はまた、馳せるように空を見上げた。
「アラリエラ様…」
私の罪は、永遠に許されぬのでしょうか…。
***
「はい、あーん」
「あーんっ」
大きく口を開ける蓮奈に唐揚げを挟んだ箸を近付けると、蓮奈は一口でペロリと食べてしまった。
「んー、おいしいっ」
「ありがとう。蓮奈にそう言ってもらえると嬉しいわ」
高く昇った太陽の下、私達は屋上で2人並んで仲良くお弁当を広げていた。ボーッとしてたらすぐにお昼になっちゃったのよね…時間が過ぎるのって早いわ。
「からあげ~!卵焼き~!」
「楽しそうね…」
もう苦笑しかできない。蓮奈は勉強より何より食べることが好きらしく、所謂食通なんだとか。特に庶民風のご飯が好きなんですって。
週末は美味しいものを求めて、いろんな場所へ足を運んでいるんだとか。…それで何でこんなに細いのかしら…?謎ね。
「んむんむ…ほうらっ!」
「全部飲み込んでから話しなさいな」
口を一生懸命モゴモゴさせて咀嚼している蓮奈に呆れちゃうんだけど、…やっぱり可愛すぎて許してしまう。だって子リスみたいですっごく愛らしいんだもの…。
抱きしめたい衝動に駆られていると、ようやく全部飲み込めたのか、蓮奈が私に向かって口を開いた。
「んーっとね、実は駅前にオシャレなケーキ屋さんを見つけたの。よかったら放課後どう?」
まだ食べる気なの、あなた…。
「良いわよ、…と言いたいところだけれど、今日は用事があるからパスするわ」
「用事って…あ、もしかして、…生徒会?」
「そう。連合祭の打ち合わせですって」
「へー、もう連合祭の季節か~。早いねぇ」
蓮奈は楽しそうに呟いた。
類は友を呼ぶ、というやつです。
天使のターンはあと2、3話で終了します。