表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12

出逢いし天使 - 3

久しぶりの更新です。遅くなってすいませんでした。それではどうぞ。



『続いて、女子部生徒会会長、桑田久弥からご挨拶申し上げます』



例の男を少し気にしながら言う。これで最後。会長、さっさと終わらせてよね…。



…シーン



『会長?』



シーン



呼びかけても一向に出てくる気配がない。これは確実に寝てるわね…。まったく。



『失礼』



そう言い置いて、ステージ脇へ舞い戻る。そこには案の定というか、こっくりこっくり眠りこけている会長の周りを生徒会員が涙目で囲んでいた。



「どいてちょうだい」



そう言ったのが私だと分かると、ホッとした表情で道を開けた会員たち。



「…会長」


「んむぅ…」


「……」



まったく反応しない会長に、堪忍袋の緒が切れた。私はガシッと会長の襟首を掴み、ズリズリと引きずってステージの方へ歩く。



「か、和音くるし…っ」


「今更起きたんですか?会長」



パッと手を離してやると、ごほごほと咳き込む会長。ちょっとやりすぎたかしら…。



「和音ひどい…」


「あなたが悪いんです。ほら、さっさと終わらせてください」



絶対零度の笑みを浮かべて言うと、会長は冷や汗ダラダラで「はい…」と呟いた。初めからそうしていればいいのに…とか何とか考えながら、私はステージへ上がり、何事もなかったかのような澄まし顔で、



『失礼しました。それでは会長、よろしくお願いいたします』



と言った。そんな私に皆が苦笑していたけれど。



「新入生の皆さん、ご入学、心からお祝い申し上げます。我が校は…」



すると先ほどのうつらうつらとしていた瞳は見開かれ、真剣な表情で挨拶を始める会長。こういうところは尊敬出来るのだけれど…普段がああだと何ともね…。



『それでは皆さん、引き続き連合祭をお楽しみください』



あ、終わったみたいね。会長ステージから退いたのを確認してから、



『以上で開式を終了いたします』



私のその声に、少しずつホールがざわめきだした。…さて。




「会長、ご説明願えますか?」


「ごめんなさい、つい油断して寝ちゃいましたー」



場所をステージから生徒会控室に移動し、私はソファーに、会長は床で正座をして説教中。



「あれだけ寝るなと言ったでしょう。今日は新入生歓迎会、それも男子部との合同行事なんですよ?それなのに生徒会長が居眠りだなんて…女子部生徒会の恥です」


「すいません許してくださいごめんなさいー」



ペコペコと土下座をする会長。端から見たら異様な光景よね、これ。

…仕方ない、どうやら一応は反省しているようだし…。



「まぁ、そこまで言うのなら…」


「言うのなら?」


「1ヶ月、生徒会室での睡眠禁止を条件に許してあげてもいいですよ」


「…えぇ!!!?」



会長は絶望したような表情を顔に浮かべ、私はほくそ笑み、周りの会員たちは憐れむような顔を会長に向けた。

会長は一日の大半を生徒会室で睡眠を貪りながら過ごしている。教室は騒がしいから、屋上は私が使用しているからーー生徒会長の権力も理事長孫の血には勝てないーー、と静かに眠れる場所がないからだ。そんな会長に生徒会室での睡眠禁止令は酷すぎるほどの罰。でも今日の失態をみれば、それ相応、といったところなので気にしない。



「それでは、友人が待っているので失礼します」



呆然とする会長を置いて控え室からホールへと戻る。



「うわぁ…」



ホール内は予想以上の混みようで、1歩進ごとに誰かとぶつかってしまう。特に中心部に人が集まっているらしく、近づくに連れてその多さはさらに増加。

これは…絶対人混みの中心にいるの、蓮奈たちね…。でも今まで皆が私に気付かないまで夢中になって彼らを見ることはなかった。ということは、新しい転入生効果…か。



「っいたっ…」



その時突然後ろからドンと押され、よろけてしまった。倒れることはなかったけれど…。



「足、捻ってしまったかも…」



我慢出来ないほどではないけれど、ちょっと歩きにくい。ズキズキと刺すような痛みが足首に集中しているみたい。

…仕方ないわね。



「失礼、ちょっといいかしら?」



目の前にある背中に呼びかける。



「あん?こちとら椛さん見るので忙し…って、"天使様"!?」


「え?和音様だわ!!」

「先ほどの司会、素晴らしかったです!」


「あ、ありがとう」



どうでもいいから早くどいてくれないかしらね…。



「…ごめんなさい、友人を探しているの。道を開けてもらってもいいかしら?」


「もっ、もちろんです!」

「望月さんですね!望月さんは?」

「望月さんは…」

「望月さん…」



「…ここですっ!」



その一声に、パッと道が開く。伝言ゲーム…?まぁ、ありがたいけれど。



「ありがとう」


「い、いえいえ!!」



にっこり微笑めば、そばにいる人皆が同時に頬を染めた。ちょっと面白いわね…ふっ。

カツンカツンとヒールの音を鳴らして、突然静かになった道を歩く。そしてそれを全員がじっと見つめていて…なんだか、居心地が悪いわね。ちょっと不機嫌になりながらも歩き続けると、だんだん蓮奈の姿が見えてくる。

柔らかく微笑む蓮奈の横には寄り添うように坂本が立っていて、さらに坂本の横には…



「御機嫌よう」



例の男が、いた。



今回はちょっとだけ長目。ついに二人が出逢いましたね…!な、長かった←

次回は悪魔のターン、出逢うだけじゃあ終わりませんよ!ここからが本番です!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ