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プロローグ

 「……あっ」


 光源が淡いランプしかない薄暗い部屋の中に、艶やかな女声が響き渡る。

 その淫靡な声に思わずドキドキとしながらも、僕は努めて冷静な面持ちのまま優しく声をかける。


「力加減はいかがですか?」


「ちょうどいいです……んっ」


 白磁のような白く滑らかな女性の肌に、淡く発光する親指をスーッと通せば、再び女性から嬌声が漏れ出る。

 その声に僕は再び身を固くしながら、ふと苦笑を浮かべる。

 はたして今目の前で悶えている女性がこの国の王女様だと誰が信じられるだろうか。……正直マッサージを施している僕自身も信じられない気持ちで一杯である。

 吸い付くような柔肌に再びオイルを広げるように指を通す。


「……んあっ」


「この辺りですか」


「はいぃ……そこが気持ちいいですぅ……」


「ではこちらを重点的にほぐしていきますね」


「お願いしますぅ……ひゃん!」


 王女様は嬌声を上げながら、時折内股を擦り合わせる。そんなあられも無い姿を目にしながら、僕は念入りにマッサージを行っていく。


 ……それにしてもまさかこんな人生が待っているなんてなぁ。


 目の前には王女様がいて。そして彼女の後に予約が入っているのが、エルフの王女様、聖女様に、裏社会を統べる闇ギルドのトップと、まさにこの世界の中枢を担う人々で──


 そんな数多の権力者と密接に関わっているからか、いつからか世の中にこんな噂が流れるようになった。


 ──世界中のあらゆる要人女性を虜にする『世界の帝王』とも呼べる者がこの世のどこかに存在していると。


「……いやほんと、どうしてこうなった」


「何かおっしゃいましたかぁ?」


「いえ、なんでもないですよ」


「ならよかったですわぁ」


 蕩けるような表情で王女様が微笑みを浮かべる。僕は表面上は彼女に笑顔を見せつつも、非現実的な現状に改めて内心で苦笑を浮かべる。


 ……ほんとどうしてこうなった。


 ついこの間までただマッサージを受けるのが好きなだけで、何の取り柄もないアラサー社畜だったはずの僕が、いったいなぜこのような特別な立場になっているのか。それはほんの数年前のこと──

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