第七話『軽音部に呼び出された』
放課後、帰り支度をしていた俺の背中に、
いきなり熱量120%の声が突き刺さった。
「おい蕨! 音楽、詳しいんだって?」
(うわっ! 誰!?)
振り向くと、軽音部エース・逗子トオル。
ギターケースを背負い、汗でシャツが張りついている。
陽キャの中でも“音楽筋肉系”という希少種だ。
「な、な、なんの話……?」
「授業で言ってたろ。“音は感覚で伝える”って。
あれマジ響いたんだよ! これ聴いてくれ!」
逃げる暇もなくスマホが差し出される。
──ギュイーン。タラリラ。リラリラ。
ギターのリフが教室に流れる。
勢いはある。だが、どこか“もったいない”。
(惜しい……コードの芯が足りない……)
「ど、どう?」
(逃げ場、なし)
「あ、あの……いいと思うけど……
リフの裏にコード感を足すと、もっとエモくなるかも。
C→Am→F→Gとかで、ベースが歌うようにするとか……」
逗子の目がまんまるになった。
「……天才じゃん。プロじゃん!」
(しまったああああああ!!)
慌てて両手を振る俺。
「ち、違う! たまたま耳が勝手に……!」
「助かるわ! ちょっとアドバイザーやってくれよ!」
「ア、アドバ……えっ?」
「次の練習、音楽室な!」
逃げる暇もなく、新クエストが発生した。
【新クエスト】
《軽音部のアドバイザーを引き受けろ》
報酬:幸福度+30%/秘密バレ率+20%
家に帰ってからも、頭の中がざわついていた。
(どうしよう……本当に呼ばれたら……)
風呂に入っても、寝転がっても、逗子のギターリフがリピート再生される。
気づいたらパソコンを立ち上げ、DAWを開いていた。
(ちょっとだけ、研究……いや、分析!)
リフを耳コピして、仮のドラムとベースを打ち込む。
気づけば、もう夜の十一時。
(……あれ? めっちゃ良くなってない?)
テンポを少し落とし、ベースを滑らせるように動かす。
そこにストリングスを少し足して――完成。
再生ボタンを押すと、音が部屋いっぱいに広がった。
逗子のフレーズが、少しだけ違う世界に化けていた。
(……これ、本人に聴かせたら何て言うかな)
心がふわっと軽くなる。
だが、次の瞬間、背筋が冷たくなった。
(ダメだ、そんなことしたら……裏ボスってバレる!)
椅子にもたれて深呼吸。
少しだけ落ち着きを取り戻す。
(にしても……逗子。あいつ、謎の投稿者って線もあるな)
“裏ボス”を話題にしてきたのも、あの投稿者。
音楽に詳しい。タイミングも妙に合う。
(……できれば探っておきたい)
パソコンを閉じ、立ち上がる。
「よし……明日は探偵の蕨だ」
その言葉に、自分で少し笑ってしまった。
【幸福度:+5%】
【研究モード:発動中】
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