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この学校には“裏ボス”がいる。  作者: Rockston.
第一章 裏ボスの苦悩
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第五話『SNS授業が魔界だった件』

 登校した瞬間、教室がざわついていた。

 クラス中がSNSの話題で火を噴いている。


 蕨マナブ──俺は席に着きつつ、そっと視線だけで周囲をスキャンする。

 ……もちろん誰も俺には気づかない。


 それでいい。

 住民は、存在感のステータスがゼロなのだ。


(今日こそ静かに……町の端っこの自宅で待機……)


 その祈りは、秒速で破壊された。


「では今日の授業は──SNSフォロワーの伸ばし方です!」


 教室の空気が、一瞬で“戦場に向かう部隊”みたいに引き締まる。


 最初に前へ出たのは、陽キャ三冠王・鵠沼シュウ。

 スポーツ・会話・フォロワーの三種の神器を揃えた、一年の魔王候補だ。


 鵠沼がスライドを叩く。


「まずジャンルを決める! 軸を作れ! で、継続!

 最後に……企画力!!」


「うおおおお!!」


 魔王の集会みたいに盛り上がるクラス。


(理論的すぎて逆に尊敬……

 ていうか全部初耳……俺、感覚だけで曲作ってただけ……)


 勉強モードに入りかけていたところで、事件は起きた。


「じゃあ次、蕨くん」


 名前を呼ばれた瞬間、脳内で警報が鳴る。


(無理無理無理無理無理!!)


 立ち上がるだけで心臓が倍速。

 指先まで汗がにじむ。


 それでも、口だけはなぜか勇敢だった。


「あ、その……フォロワーって……

 無理に増やすより、“気持ちいい音”とか……直感を大事にした方が……

 自然に見つけてもらえる……と、思います……」


 教室「…………」


 そして──


「お前、音楽やってんの?」

「なんで詳しいの?」


(やばい!! 喋っちゃった!!)


 慌てて言い訳を連射する。


「あ、いやその……好きなクリエイターの受け売りで……!」


 先生は笑って言った。


「蕨くん、いい感覚だよ。でも感覚だけじゃ伸び悩む。

 理論も磨ければ、“チャンネルは飛躍する”んだ。」


(理論……必要なのはわかる……

 でも今は心臓が暴れて死にそう……)


「はい!すみません!」


「謝らなくていいよ」


「すみません!……あ、すみません!」


 クラスに笑いが起きる。


 そのときだった。

 窓際の眼鏡女子──俺が勝手に“宿屋の娘”と呼んでいる子が、

 ほんの一瞬だけ口元をふっと緩めた。


 笑ったのではない。

 でも、確かに 興味の気配 があった。


(…………ん?

 いや気のせい。絶対気のせい……のはず……)


 授業後。

 クラスでは俺の「すみません祭り」が開催された。


「蕨、お前ウケるな!」

「今の切り抜きてぇ〜!」


(やめてくれ……目立ちたくない……

 でも……ほんのちょっとだけ……嬉しい……?)


 脳内UIが勝手に動く。


【周囲:住民の発言で盛り上がる】

【住民:困惑+微妙に嬉しい】


(いや、気のせい……たぶん……

 いや……普通に嬉しかったな……)


 結局のところ、

 俺は今日も“裏ボス”なんかじゃなく、

 ただの“住民”でいたいだけだ。


 ……だけど。


 今日の笑顔の残り火が、

 この先の運命をそっと動かし始めていることを──

 この時の俺は、まだ知らない。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ、率直な評価や、感想をいただければ励みになります!より良い作品が創れるよう、頑張ります!

よろしくお願いします。

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