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短編集

老猫ミケ

 朝早く、おばあの布団の中で目を覚ます。快適な温かさで安心感を覚えるが、同時に寂しさも覚える。腕で挟まれている状態を抜け出し、布団の外に出る。冬の寒さが冬毛を通り肌をなで、ブルブルっと身震いをした。

 毛づくろいを数分行い、身だしなみを整える。今日は特に気合を入れてそれをする。自分の体がすっかり弱くなり、満足に食事ができなくなった結果、体は全盛期体重の半分も失ってしまった。

おばあは、

「あんた抱っこしやすくなったねぇ」

 と気を使った発言をしてくれるが、医者はおばあに色々話していた。やれ薬だの、じんぞう?がどうのと。自分の体は自身が一番わかっているし、毎回あのちくっとするやつを笑顔で刺してくる危険人物の話をなぜおばあは真剣に聞くのか? 理解に苦しむがそれからおばあはカリカリを柔らかくしたり、真っ白な硬いやつをご飯に混ぜるようにした。

 

 そんなことを思いながら床の間から自分用の出口から出ていく。今日は急がなくてはならない、朝ごはんも食べずに居間を抜け、台所を抜け、裏口から外に出る。先ほどよりも冷たい空気が体を撫でる。空を見上げると青空が広がっている。まだまだお日さまとおばあが呼ぶ暖かい眩しいやつは遠くにある。一番私とおばあの気に入っているお日さまは、頭の上くらいから照らしてくれる時だ。最近の寒さもその温かさで溶かしてくれる。庭でおばあがやさい? の面倒を見ている時にぬくい廊下で眺めるの、楽しかったなぁ。


 塀の上を歩き、硬い灰色でつめたーい壁と塀に囲まれた草むらを見つける。ここでいいかと飛び降りる。着地に失敗し改めて自分の体が、限界に近いことを思い知らされる。草むらに這いずっていき、とぐろを巻く。しばらくしてお日さまは頭上を通り過ぎ、お空は赤みがかった色になっている。色はおばあとチビが教えてくれた。チビがチビじゃなくなってからはおばあの家に遊びに来なくなった。そんなことを思っているとよく聞きなじんだ声が聞こえる。これは…おじい? おじいはちょっと前に家からいなくなり、豪華な机に一人。動かないちっちゃいオリに入って出てこなくなった。いくら呼び掛けても表情一つ変えない。そんなおじいが呼んでいる。


 気が付くと、草むらの向こうに眩しい一本道ができていた。その先でおじいが手を振っている。力を振り絞って立とうとすると、意外にもすんなり立てた。気づけば体の節々の痛みも消えている。


 おじい、今行くからね。おばあ、すぐに来ないでね。


 ミケはそう思いながら光の橋を全力で走っていった。

 

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