6話 日本一の唐揚げを間接キス
「やばいやばい!早く食べなきゃ!」
俺は自分の弁当を開きいつも通りの母さんの味付けの卵焼きに手をつける。
「一夜がうるさいから食べるの遅くなった……これは私を彼女にして詫びるべき!」
麻昼はそういうと当たり前かのように僕のお弁当からミートボールを取り、口に運ぶ。
「なんでそうなるんだよ!ってか!勝手に俺の弁当食うな!」
俺は再び俺の方へと伸びてきた麻昼の腕を掴み睨みつけながら言った。
「二人ともいつまでも夫婦漫才してたら本当にお昼時間なくなっちゃうよ〜」
愛花さんは太めで金属でできた箸を取り出すと電子お弁当に映し出された卵焼きを突いて口に運んだ。
俺と麻昼はそんな愛花さんの方を見て固まる。
「アイアイ……それ味するの?」
俺も気になっていたことを麻昼が愛花さんに聞くと愛花さんは「あぁ〜」と頷き出す。
「そういえばお弁当の話途中だったねぇ〜このお弁当の食べたいおかずをこの箸でつついて口に入れると!なんと!その食べ物の味が口の中に広がるのです!」
愛花さんはそう言うと箸で唐揚げをつつき、麻昼の口へと運ぶ。
麻昼は目の前にきた愛花さん箸をパクッと咥えると……何もないはずなのに口をもぐもぐさせて目を輝かせる。
「ふしぎ……食感ないのに口の中にすっごく美味しい唐揚げの味が広がる!!」
麻昼はそういうと興奮したように愛花さんから箸を取り上げて愛花さんの電子お弁当の唐揚げをつつくと俺の方へ向けてくる。
「この唐揚げすごく美味しい!一夜も食べるべき!」
俺は麻昼の勝手な行動に愛花さんが怒っていないか気になってみるが愛花さんは怒っておらずニコニコしていた。
「えへへーママのご飯は日本一だからねぇー」
愛花さんも許してくれてそうなので俺は愛花さんの箸を咥えると口の中にニンニクと生姜の香りが優しく香り、その後すぐに鳥そのものの味がしっかりと俺の味蕾を刺激した。
「うま……すぎる……」
唯一の懸念点としては食感を感じることや溢れ出る肉汁を感じることができなかったことだった。
「えへへーそうでしょーママの唐揚げは美味しいでしょぉー」
「よし!これで一夜と間接キス!」
俺が唐揚げの美味しさに感動していると、麻昼がまた変なことを言っていた。
「何を今更言ってんだよ?いつもしてんだろ?このくらい?」
「そうだけど私からしたら一夜との間接キスは毎回特別!」
別に麻昼と間接キスすることなんて過去に何度もあったので言うと麻昼は頬を赤く染めながらもじもじしていた。
「へぇー二人は間接キスとか沢山してるんだー私は間接ファーストキスだったけどなぁー」
愛花さんがボソッとそう言って麻昼から返してもらった箸を口に咥えたのを見て俺の心がズキっとなった。