3話 たわわな果実とトリオ漫才
「アイアイ!ご飯食べよ!」
そういって麻昼はいつもの動作で俺の席のお弁当を広げ始める。
「えっ!?私もいいのかな?」
愛花さんは戸惑いながら首をかしげて俺に聞いて来る。
その見る人によってあざとくも見える仕草を美少女の姿でやることの破壊力をまだヒューマノイドの姿に慣れていない愛花さんは気づいていないようだ。
(バタッ……バタッ……)
やばい!何人かの男子生徒が鼻血出して倒れた!
「俺は愛花さんがいいならここで食べてもいいよ」
「やったー!!じゃあお言葉に甘えて一緒に食べさせてもらうね!」
愛花さんは俺の返答に嬉しそうにぴょんぴょん跳ねながら喜ぶを表していた。
何とは言わないが、たわわ実った柔らかな2つの果実が大げさなほどに揺れていた。
あれも人工物なんだよな……素材は何なんだろう……。
「…………エッチ!」
愛花さんは俺の目線に気づいたようでジャンプをやめて俺の隣の席の奴に了承を得てから椅子を俺の席の方に向けると胸元を隠しながら静に座った。
「やっぱり一夜は大きいのが好き……でもアイアイのは作り物!私のは本物!!」
俺と愛花さんとのやり取りに麻昼は頬を膨らませながら自分の胸元に手を置いて抗議してくる。
麻昼……本物でもそこがぺちゃんこなら、無いに等しいんだよ!
「むぅ!!一夜名にその目!なんかムカつく!」
おっと……つい顔に出てしまっていたようで麻昼の頬がさっき以上に膨らんでしまう。
こんな騒がしいなか勇翔が何してるかって?そんなの黙々と弁当を食っているが?
勇翔も結構マイペースなんだよなぁ……。
てか……勇翔の弁当なんだよあれ……ご飯の上に大量のメンマ乗ってるんだけど……。
「ん?これか?これはかーちゃんがこの前うちの店でやったメンマ増量キャンペーンのあまりを無理やり入れたみたい……この調子だと来週あたりに米の上にナルトが乗ってきそうだな」
「あー確かこないだ勇翔の父さんがテレビで高級タケノコ堀の特集みて時代はメンマだって言ってメンマだらけのラーメン作ってたな~なるほど!そのあまりか~って!おい!なんでお前は自然と俺の心を読んでんだよ!」
勇翔の肩に俺のツッコミが刺さり、(パンッ)っと心地よい音が教室に響く。
「あはははは!!!あはっあはっははは!三人とも面白すぎるよ!いつもそんななの?」
俺のツッコミの音が掻き消えるとともに大きな笑い声が聞こえ、そっちを見ると愛花さんが大口を開けて腹を抱えながら笑っていた。
なぜだか僕はこの時初めて、彼女の本当の表情を見た気がして一瞬胸が早く鼓動した。
「一夜はいつも間抜け。」
「一夜はいつもこんな感じだな!」
「なんで俺なんだよ!おかしいのはお前らだろ!?」
「あははは!ほんとにおもしろいね!三人と一緒ならこの3年間私ずっと笑ってそう」
愛花さんは笑顔を浮かべながらそういったが、その表情にはどこか影がある気がした。