表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したいおじさん念願の異世界転生するも悲惨だった件  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/146

第八章「記録の深淵と、新たな訪問者」 第1話「アーカイヴ・スフィアの来訪者」 〔後編〕「試練の記録と、開かれる扉」

ルミアが一歩踏み出すと同時に、アーカイヴ・スフィアの中央部が微かに震え始めた。

 音もなく、光が渦を巻き、無数の記録パネルが空中に浮かび上がる。


 


「始まるわ……“記録同調テスト”。グランアーカイブへ至るための、最終確認よ」


 リナ=オルタが構えたように言う。


 


 記録パネルはそれぞれ、剛、ティナ、リナの前にゆっくりと浮かび、そこに映されたのは――

 彼らが過去に繰り返した“転生の記録”、その断片だった。


 


「これは……」


 


 剛の前には、かつて一度きりで命を落とした“泥まみれの沼地”、

 ティナの前には、“スキルを盗まれて見捨てられた村”の記録が浮かび上がる。


 


「記録とは、消えた過去ではない。

 向き合うべき“問い”であり、時に“呪い”にもなり得る」


 


 ルミアの言葉と共に、記録が実体を帯び、空間に投影された。


 


 それぞれの“失敗”が再現され、目の前に立ち塞がる。

 そして――


 


 剛の前に現れたのは、自分自身だった。


 


 まだ何も知らず、転生するたびに諦めていた頃の“過去の自分”。

 迷い、逃げ、そして折れた記録。


 


「俺は……」


 剛が唇を噛みしめる。


 


「何度も失敗して、何度も逃げてきた。でも……」


 


 剛は、剣を抜いた。


「今のおれは、“書き換えることを恐れない”。

 記録を消すんじゃない。選び直すために、向き合うんだ!」


 


 その一振りが、“過去の自分”を断ち切った瞬間、記録が静かに光に変わった。


 


 ティナもまた、自分を見捨てた仲間たちの幻影に立ち向かっていた。


「……あなたたちはもう、私の“今”じゃない。

 私の記録は、私自身が作る!」


 


 そしてリナは、“記録を壊した罪”の記憶に微笑む。


「ええ、壊したわ。記録も、神も、全部。

 でもそれでも、私は選ぶ。この物語を、歩き続けるってことを」


 


 やがて三人の前に残ったのは、ひとつの扉だった。


 それは、他のどこにもつながっていない“記録未接続領域”。

 扉の上には、かすれた文字でこう記されていた。


 


 《グランアーカイブ:第零層》


 


 ルミアが静かに扉の前に立つ。


「あなたたちの記録は、すでに“神の管理外”にある。

 この先は、誰も辿ったことのない場所――

 あなたたち自身の物語を、ここから紡いでください」


 


 剛は頷いた。


「行こう。記録の果てのその先へ」


 


 三人は扉を押し開けた。

 その先に広がっていたのは、白く無限の書架――

 世界中のすべての記録が、まだ何者にも読まれていない“記憶の原野”だった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ