第八章「記録の深淵と、新たな訪問者」 第1話「アーカイヴ・スフィアの来訪者」 〔前編〕「空から降り立つ、謎の球体」
蒼く広がる空の彼方から、突然の閃光が都市エルネシアの空を切り裂いた。
それは、まるで星が降ってきたかのような眩い軌跡だった。
「なっ……! あれは一体……?」
剛が咄嗟に空を見上げる。
ティナも呆然とした表情で視線を追った。
落下したのは、巨大な球体――アーカイヴ・スフィア。
直径数十メートルはあろうかという、その球体は完全に無人と思われるが、内部から光がほのかに漏れていた。
「これが……伝説の“アーカイヴ・スフィア”……」
リナ=オルタが低く呟く。
それは、古代の記録装置であり、世界の膨大な記録が封じられていると言われる禁忌の存在だ。
だが、今回の来訪は偶然ではない。
球体の表面に刻まれた謎の紋様が、剛のスキルセンサーに反応した。
「何か……呼んでいる。俺たちを、迎えに来たみたいだ」
その時、球体から低く響く機械音が漏れた。
「——起動開始。アーカイヴ・スフィア。アクセス可能。
認証者、待機状態」
ティナが端末を操作しながら言った。
「これ、認証……俺たちのスキルや記録に反応してる。
どうやら“選ばれし者”が近くにいるってことね」
剛は深く息を吸い込んだ。
「ここから先は……俺たちの“真の試練”が始まるかもしれない」
謎の球体がゆっくりと開き始めた。
その扉の向こうに、未知の世界と記録の秘密が待っている。
──〔中編〕へつづく。




