表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したいおじさん念願の異世界転生するも悲惨だった件  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/146

第七章「記録なき日々と、新しき危機」 第2話「誕生する村と、“記録を恐れる者”」 〔中編〕「記録と自由のあいだで」

アリエル村に広がった“シロの言葉”は、剛たちが予想していた以上に深く、人々の心を揺らしていた。


 


「名前がつくって、そんなに恐いものなんですか?」


 昼、作業の合間に子どもが剛に尋ねた。

 剛は道具を置いて、しゃがみこむ。


「うん。名前ってのは、“その人をこの世界に留めるための杭”みたいなもんだ。

 だから……それが嬉しい人もいれば、怖い人もいる」


 


「でも僕は、“ここにいる”って思える名前がほしい」


 子どもの小さな声が、剛の胸を軽くした。


「……じゃあ、考えようか。お前にぴったりの名前を」


 


 一方、ナナの元には、不穏な情報が届いていた。


「“記録を拒む者たち”が、近郊に集まりはじめてるわ。

 おそらく、シロが何かを動かしてる」


 ナナが机に書類を広げながら、剛とティナに報告する。


「アリエル村が“名前を与える場所”として広まった分、逆に“名前を持ちたくない者”の反発が強まってる。

 もしかしたら、直接的な干渉も……」


 


「戦いってことか?」

 ティナが険しい顔で尋ねる。


 


「まだわからない。でも、彼らは“定義されない自由”を信じてる。

 それを守るためなら……こちらの“記録”を壊しに来る可能性はある」


 


 剛はしばらく沈黙した。


 そして、ぽつりと呟く。


「たしかに、俺たちは“勝手に名前をつけてる”のかもしれないな。

 でも、それは希望でもあるはずなんだ。生きてることの証……消えない足跡だ」


 


 ナナが彼の目をまっすぐ見つめる。


「でもその“証”が、誰かの自由を壊すなら……それは、暴力になる。

 剛、あなただけじゃない。もう、“定義者”はこの村に何人もいる。

 誰にでも“名付ける力”を渡してしまった以上……この世界は、無傷じゃ進めない」


 


 その時、村の門が開き、ひとりの青年が駆け込んできた。


「大変です! 近くの林で、“未定義集団”と接触しました!」


「未定義……?」


「名もなく、職もなく、記録も持たない。まさに“記録を拒む者”たちです。

 彼らの言い分は明確です――“アリエル村の記録は、世界を汚す”と」


 


 場が一気に緊張する。


 剛は、深く息を吸った。


 


「会おう。直接、彼らと。……話して、知りたい。

 “記録を恐れる者”が、何に怯えているのかを」


──後編につづく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ