第1章「夢叶う日」 第7話「第六回転生、魔物に踏まれる」
「…………もはや、慣れたな」
白い空間。
転生おっさん・相田剛(50)、ただいま五連続即死中。
そろそろ死ぬために生きてる気がしてきた。
「おかえりなさい! 今回の収穫はこちらっ!」
【新スキル:毒耐性+1】
※有毒エリアでの即死により獲得!
「……あのさ。ちょっと聞きたいんだけど」
「はい?」
「このスキル……ちゃんと“活かすタイミング”って来るの?」
「きますよ! むしろ、いずれ“死ぬほど毒の中で戦う”日が来ます!」
「それってつまり“死ぬほど”なんだよな……」
剛はため息をつくと、拳を握る。
「いいさ。もう心の準備はできてる。来いよ第六回転生!」
「おおっ!? 今回は前向きですね!? では──行ってらっしゃい!」
「フン、こっちはもう慣れてんだよ!」
光に包まれながら、相田剛は第六の世界へ向かっていった。
◆ ◆ ◆
次に剛が目を開けたとき、そこは草原だった。
空は青く、風は心地よい。
「……おお!? これは……?」
初めての快適な転生スタート。
地面は固く、毒もなければ火山もない。空も飛んでない。スライムもいない。
「よしっ……よし! ついに、ついにまともなスタートだあああああ!!」
全力でガッツポーズを決めた、そのときだった。
──ドスン、ドスン、ドスン……
「……ん?」
地鳴りがした。
地面がわずかに揺れる。風が逆巻く。
遠くに黒い影。複数。巨大な……足音。
「……まさか……いやまさか……いやいやまさか……」
剛が見たもの──それは、草原を突っ切って突進してくる暴走魔物の群れだった。
「やめろおおおおおおおおおおお!!!!」
叫び、逃げ出そうとした瞬間──
「……うわ、足滑った」
地面の草で足を取られ、転倒。
そして次の瞬間──
──ドガァン!!!
見事に象サイズの魔獣の足が、剛を直撃した。
地響きとともに、大地がへこみ、何もかもが沈黙した。
──ピロリン。
【あなたは死亡しました】
踏み潰しによる全身損壊
新スキル獲得 → 【打撃耐性+1】
◆ ◆ ◆
「おかえりなさいっ!」
笑顔の神様・ヴァロスは、もう完全に実況者ポジションに落ち着いていた。
「いやぁ……あれは潰れましたねぇ!」
「潰れましたねぇ、じゃねえよおおおおおおおお!!!」
「では、今回の成果はこちらっ!」
【現在のスキル一覧】
・火耐性+1
・溶解耐性+1
・嚥下耐性+1
・刺突耐性+1
・毒耐性+1
・打撃耐性+1 ← New!
「これであなたは、“焼かれても溶かされても、飲まれても突き刺されても、毒にまみれても踏まれても、ほんのちょっとだけ我慢できるおっさんになりましたよ!」
「ちょっと待って、それどんなキャラ設定!? 誰が使うんだよそんな耐性キャラ!!」
「僕がTRPGで使います!」
「使うなよ!!!」
──第7話・完──