表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したいおじさん念願の異世界転生するも悲惨だった件  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/146

第四章「世界を知る者たち」 第4話「偽神の影と、選択する者」 〔中編〕「自由意志を証明せよ」

剛の拳が、風を裂く。

 だが――その一撃は、アレイスには届かなかった。


 風も、熱も、重力も、“彼の周囲”だけは違う法則で動いているかのようだった。


「スキル干渉領域、展開率96%……ほぼ完成領域か」


 ノエルが焦りをにじませる声でつぶやいた。

 アレイスのスキル【構造再演スクリプト・リライト】は、あらゆるスキルの効果条件そのものを“再定義”するという、まさに“偽神”の名にふさわしいもの。


 


「この世界の物理も、魔法の前提も、こいつの手にかかればただの変数……!」


「お前の“火”は、私の定義では“冷気”となる。

 お前の“攻撃”は、私にとって“無害な演算”だ」


 


 アレイスの冷ややかな言葉とともに、剛の攻撃がねじれて消えた。

 敵意も怒りもすべて、“システム的に無効化”されたかのように。


 


「まるで……こっちの人生が“エラー”だって言われてるみたいだな」


 そう言って、剛はふっと笑う。


 


 ――ああ、思い出す。


 “負け続けた記憶”。

 “努力が無意味だった感覚”。

 “何度死んでも、次の世界に投げ込まれた絶望”。


 


「でもな……お前には、わかんねぇんだろ?」


 剛が静かに構えを取る。


「予定調和の中でしか動けねぇ奴に、“苦しみの中で掴んだ答え”はわかんねぇ」


 


 そのとき、ノエルが叫んだ。


「剛さん! あなたのスキルログ、進化を始めています!!」


 


【スキル《融合変化》が“進化条件”を満たしました】

【新スキルを選択してください】


・進化①:《属性超変化アルティメット・フュージョン

・進化②:《意思反転リバース・パス

・進化③:《適応削除ディレート》※リスク高


 


「……“選べ”ってのかよ。こんな状況で?」


「それが、あなたの“自由意志”です。

 あなたの存在そのものが、今、世界の構造に問いを投げてるんです!」


 


 剛は、一瞬、目を閉じた。


 これまでの旅路。仲間との笑い。

 転生のたびに忘れてしまった“ほんの一瞬の優しさ”。


 それを、思い出していた。


 


「……だったら俺は……」


 


【進化スキル:《意思反転リバース・パス》選択】

【スキル効果:対象が“最も有利”と判断した結果を、強制的に“裏目”に変換する】


 


「“予定通り”の最適解? そりゃ都合がいいよな、神サマにとっては」


 剛の瞳が燃える。


「でも俺は、“裏目”で勝つ!

 何度も死んで、やっと手に入れた選択肢だ……なめんなよッ!!」


 


 瞬間、アレイスが反応する前に、剛の攻撃が――

 “定義を上回って”直撃した。


 


 爆風と衝撃が広場を包み、

 アレイスの無敵だったスキル構造が、初めて“崩れる音”を立てた。


「……この干渉……まさか、“再定義の否定”か……?」


 


 アレイスの目に、初めて“興味”が灯る。


「選択、とは……それほどまでに、不確定か……。

 では、その不確定性の先を、見せてもらおう。――“次の手”にて」


 


 偽神が、初めて“構え”を取った。


 神に似た者と、人が抗い得た意志。

 その衝突は、ついに本格化しようとしていた。


 


──〔後編へ続く〕

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ