第1章「夢叶う日」 第6話「第五回転生、今度は毒ガスエリア」
「……ああ、もう帰ってきた」
真っ白な空間に、またも現れた男。
転生おっさん・相田剛(50歳)、ただいま四連即死中。
もはや特にリアクションもなく、両手を腰に当てて遠くを見るようなポーズをとっている。
「今回は……どこがやられたんだっけな。心か? いや、もうとっくに折れてるし……」
「おかえりなさいっ!! では恒例の獲得スキル、発表です!」
【新スキル獲得 → 刺突耐性+1】
「そんな“よかったですね☆”みたいなノリで発表すんな!! 矢にされて死んだんだぞ俺は!」
「確かにハリネズミみたいでした!」
「神のくせに感想がユーチューバー!!」
ヴァロス神は楽しそうに、ホワイトボードのようなものを取り出した。
「現在の耐性ステータスはこちらです!」
【耐性スキル一覧】
・火耐性+1
・溶解耐性+1
・嚥下耐性+1
・刺突耐性+1
「ちょっとずつ、“死んでも死なないおっさん”に近づいてきましたね!」
「そこまでの過程で五回死んでるんだけどな!!!!」
叫ぶ剛を無視して、ヴァロスが親指を立てる。
「それでは、お待ちかね! 第五回転生、行ってらっしゃい!!」
「待てや! 説明ぐらいしろよ! どこに放り込むんだ! 今度は何だ!?」
「じゃ、ちょっと“しっとり系”で!」
「ジャンルで選ぶなやああああああ!!」
光に包まれて、また彼の意識は消えた──
◆ ◆ ◆
視界がぼんやりと開ける。
そこは薄暗い洞窟のような場所だった。地面はじめじめ、空気は重く、何かが鼻に突き刺さるような臭気を放っている。
「……あれ? やけに息苦しい……」
そう気づいた瞬間、喉がヒリつく。
「ゲホッ!? う、うぇっ!? 何だこれ!? くせぇ!! 喉痛い!! 鼻燃える!!」
辺りを見渡すと、緑色の霧がじわじわと漂っていた。
空気ではなく、毒ガスだった。
「これ、完全に毒ガスエリアじゃねーかぁああああああ!!!」
慌てて走ろうとするも、すでに肺が限界だった。
目がシパシパする。意識が遠のく。脚がもつれて──
「いやまだ……まだ何もしてないのに……! 今回はせめてNPCに話しかけたかった……!」
毒ガスは容赦なく、彼の気道を焼き尽くした。
──ピロリン。
【あなたは死亡しました】
有毒空間における呼吸器損傷
新スキル獲得 → 【毒耐性+1】
◆ ◆ ◆
「おかえりなさいっ!」
もう聞き飽きた挨拶が、心を抉る。
白い空間。そこには変わらぬ神と、変わり果てたおっさんがいた。
「毒ガスだよ……なんでだよ……! 落ち着いた洞窟だと思ったんだよ俺は……!」
「さすが剛さん、また一つ強くなりましたね!」
【現在の耐性スキル】
・火耐性+1
・溶解耐性+1
・嚥下耐性+1
・刺突耐性+1
・毒耐性+1 ← New!
「それでどうやって生き残れってんだよおおおおおおおお!!」
「いい傾向です! もうそろそろ、“一瞬では死なない身体”に近づいてきましたよ!」
「一瞬では死なないって、それもう“じわじわ死ぬ”ってことじゃねえか!!」
剛の絶叫は、またもや転生の光にかき消される。
──第6話・完──