表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したいおじさん念願の異世界転生するも悲惨だった件  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/146

第四章「世界を知る者たち」 第3話「スキルマーケットと、禁じられた記憶」 〔前編〕「スキルが“通貨”の街」

 アルメリアでの戦いを終えた数日後。

 剛たちは次なる目的地、“技能商業都市フェイラン”を目指していた。


 この街は、“スキル”そのものが売買されるという、特殊な経済圏を持っている。


「スキルが……“商品”として流通してるんだよね」


 ユーリがガイドブックを読みながら驚いた顔を見せる。


「盗んだスキルも、複製スキルも、“価値があれば”堂々と取引されるらしいよ」


「……うまく利用すりゃ、強くなれるかもしれねえが……気をつけねぇとな」


 剛は肩を竦めながら、少しだけ警戒した目で街の門を見つめた。


 


 フェイランは、都市全体が巨大なマーケットのような構造をしている。


 中央には「スキル広場」と呼ばれる露店通りが広がり、

 各ブースで冒険者や商人たちが、スキルカードを掲げて客引きをしていた。


「おいおい、ホントに売ってんぞ……《剣技LV2》に、《毒矢》《木属性魔法》、はては《料理の才能》なんてのもある」


「いや、それは欲しい」


「何のために!?」


 


 そのとき、ふと剛の視界に、一軒の地味なスキル屋が入った。

 目立たない場所にある古びた店。だが、その看板には見慣れない文字列があった。


記録断片フラグメント》取扱店


「……“記録”って、まさか……」


 店の前に立っていた老婆が、剛をじっと見つめた。


「お主……記憶の空白を持っとるな?」


「!?」


「よければ、見ていかぬかの。“自分が、何者だったか”に触れたき者は、案外多いんじゃ」


 


 剛の背中に、かすかに寒気が走る。

 自分が“誰かの意思で転生させられた”可能性──


 そして、忘れていた“なにか”。


 


「……入る」


「おい、ちょっと待てよ剛、何の店かまだ──」


 クレイの声を背に、剛は静かに店の奥へと踏み入れた。


 


◆ ◆ ◆


 


 店内は薄暗く、埃っぽい香りが漂っていた。

 壁一面に並ぶのは、黒い箱と、カードのような金属片。


 老婆は棚から一枚のスキルカードを取り出し、剛に差し出した。


「これは、“お主の記録”ではない。“お主とよく似た存在”の、断片じゃ」


「……どういうことだ?」


「これは、“転生者ログ”の断片のひとつ。“本来、封印されているはずの記録”じゃ。

 だがなぜか、わしの店には時折、流れ着く。これはその一枚」


 


 剛は、そのカードに手を伸ばす。


 ──指が触れた瞬間、空間が反転した。


 


 目の前に広がったのは、深紅の空と、燃え盛る城。

 その中で、ひとりの男が剣を振るっていた。


「転生者第1号──“アカシック・コード”。

 世界最初の異界来訪者。そして、システムの“核”と融合した存在……」


 


 剛の頭に、強烈な頭痛が走った。


「ぐ……うあっ……!」


「無理はするでない。記録の断片は、魂を削る。

 だがの、あんたがそれを“見る力”を持っておるということは――お主もまた、“選ばれし者”ということじゃ」


 


 剛は、ふらりと店を出た。


 記憶の断片。過去の転生者。

 そして、「スキルの売買」の裏で、何か“深い仕組み”が動いている。


 


「……なんか、この街……表向きよりずっと、やばいことが動いてる気がするな」


 そう呟いた剛の肩を、冷たい風が撫でていった。


──〔中編へ続く〕

次回:「スキルの値段は、命の重さと比例する」──フェイランの闇に潜む“スキル密売組織”と、剛の過去を知る謎の男が現れる!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ