第三章「仲間と絆」 第9話「雷鳴の谷と、運命の分かれ道」 〔前編〕「雷とともに現れし者」
「雷が……鳴ってる」
剛が空を見上げたその時、稲妻が真っ白に夜空を裂いた。
一行がやってきたのは、“空鳴り峡谷”──西の辺境にある未開の地。
「この峡谷……前に一度、調査隊が消えたって噂の場所だろ?」
「うん。雷雲が一年中居座ってて、空がずっと怒ってるみたいな場所」
「なんでそんな縁起でもない所にわざわざ来たのさ……?」
依頼主は、王都の学者ギルド。
『雷雲の異常活性化により、付近の地脈が不安定になっている。調査と、必要であれば“現象の封印”をお願いしたい』──というのが表向きの依頼だ。
だが現地に到着した剛たちは、空気の異常にすぐ気付く。
「風が止まってる……音も……雷の音しか聞こえない……」
「これはただの気象じゃない。“魔力嵐”だ」
峡谷の入口に、風化した石碑があった。
古代語で刻まれた警句。
――《雷を解き放つ者、空に問え。破滅はその名を呼ぶ》――
「……なんか、フラグ立った気がする」
「ぜったい呼んじゃいけないやつじゃん……」
その時だった。
空が、第二の稲妻を閃かせた。
それは“空から地へ落ちる”のではなく──“地から空へ伸びる”稲妻だった。
「逆雷……!?」
「誰かが、“呼んでる”……?」
次の瞬間、目の前の地面が爆ぜる。
土煙と雷光の中から、ひとりの人影がゆっくりと歩み出てきた。
──黒いローブ。銀髪。片目に刻まれた雷紋。
「……ついに来たか。“再起動者”」
「……誰だ、お前」
「俺の名は……ジーク=ラインハルト。
“雷の契約者”──かつて、お前と同じように《何度も転生を繰り返した者》だ」
「……!!」
剛の顔色が変わった。
それは、ただの強敵ではない。“同類”──そして“自分の、未来の姿”かもしれない存在。
「どうしてここに?」
「お前を、止めに来た」
その言葉と同時に、ジークの身体から青白い雷光が放たれる。
空が再び鳴り、峡谷が揺れる。
「……ようやく来たな、おっさん。お前の運命、ここで選べ」




