第三章「仲間と絆」 第8話「飛竜襲来と、あの町の約束」 〔後編〕「火山神の奇跡と、燃え尽きぬ魂」
「ここで終わらせる……!」
剛は、自分の身体から立ち上る赤いオーラを握りしめた。
それはただの火耐性ではない。幾度も焼かれ、倒され、それでも立ち上がった彼の“経験”が凝縮された力。
飛竜が、咆哮を上げる。
地に伏してなお、王のような威厳を放ち、口内に再び炎を宿す。
「これがラストブレスってやつか……なら──受けてやるよ!」
剛は一歩前へ踏み出す。
「スキル発動──《高熱適応(下位)》……からの!」
ステータスに新たな文字が走った。
スキル進化!
《高熱適応(下位)》 → 《灼炎共鳴(中位)》
──自身の周囲に火属性魔力を帯びた熱障壁を形成し、一定ダメージを無効化+相手に“熱反射”を行う!
「灼炎共鳴……だと!?」
彼の周囲に、燃えるような赤の魔法陣が浮かび上がる。
飛竜のブレスが放たれたその瞬間──剛は真っ向から立ち向かう!
ズガァァァァァァァァン!!!
大地が震え、光が爆ぜ、村の人々が思わず目を背ける。
だがその中心に、立っていたのは──
「……ははっ、効かねえよ。何度焼かれたと思ってんだ……」
ボロボロになりながらも拳を握る男、剛。
飛竜の咆哮が止まった。
──そして、次の瞬間。
飛竜の身体が、ふっと力を抜いたように地に伏す。
攻撃を諦め、静かに剛を見下ろしたまま、その場に動かなくなる。
「まさか……共鳴した……?」
「たぶん、剛の中の“炎”が、こいつに伝わったんだ」
「信じられない……“火山神の使い”と呼ばれる飛竜が、力を退いたなんて」
そこに、神殿の奥から光が差し込んだ。
封じられていたはずの“祭壇の火”が、再び灯っている。
「……神が、目を覚ました?」
村長がつぶやく。
そして誰ともなく、村人たちが剛たちに頭を下げる。
「ありがとう……レイスト村を、守ってくれて……!」
「おっさん、かっこいい……」
「そこは“旅団のリーダー”って呼べよ!?」
◆ ◆ ◆
数日後、村は復興に向けて動き始めていた。
剛たちは、最後の見回りを終えて、村の入口で別れを告げる。
「なあ、剛」
「ん?」
「……あの時、なんで飛竜の前に立てたんだ?」
「決まってるだろ」
剛は、ぽりぽりと頭をかきながら答える。
「ここで逃げたら、次の転生でまた“火耐性+1”からやり直しだと思ってな……」
「やだなそれ……」
笑いながら、三人は歩き出す。
その背中を、村人たちが見送っていた。
新スキル習得:灼炎共鳴(中位)
称号:「火山神に認められし者」獲得!
特殊称号:「燃え尽きぬおっさん魂」獲得!




