第三章「仲間と絆」 第8話「飛竜襲来と、あの町の約束」 〔中編〕「火炎の空、絶望のブレス」
「来るぞ!! 構えろ!」
クレイが叫んだ瞬間、空が爆ぜる。
“赤の飛竜”が大きく翼を広げ、村の中央──火山神の神殿上空に停空した。
「……あの大きさ、やっぱりおかしいって!!」
剛の声が震える。
目の前の飛竜は、全長20メートルを優に超え、翼を広げた時点で村の三分の一を覆っていた。
飛竜は喉を膨らませる。
地鳴りのような唸りとともに、高熱の魔力が凝縮していく。
「来る……火炎ブレスだ!!」
「魔法障壁、展開っ!!」
ユーリが叫ぶ。
次の瞬間、世界が赤く染まった。
飛竜の口から吐き出された炎の奔流は、神殿から周囲の家屋をなぎ払い、
空気を焼き、地面を溶かす勢いで襲いかかる。
「くっ……くそぉおおおぉぉっっっ!!!」
剛は反射的に飛び出した。
防壁の間をすり抜け、神殿前で立ちはだかる。
「スキル起動──《火耐性+1》!!!」
「それ地味すぎるうううう!!」
だが、その瞬間だった。
剛の体が、赤く輝いた。
「な、なんだこれ……?」
次の瞬間、彼のステータスに新しい文字が浮かぶ。
スキル進化:《火耐性+1》 → 《高熱適応(下位)》に変化しました!
※複数回の火炎ブレス被弾記録により進化が解放されました。
「……進化、した?」
燃え盛る炎の中に立つ剛の姿は、まさに“不死の盾”だった。
ブレスの余波に吹き飛ばされそうになりながらも、彼は地面を蹴って前へ進む。
「剛さん、下がって!!」
「いいや──ここは引かない!!」
「それは死亡フラグの台詞!!」
「何度死んだと思ってんだ俺はぁぁぁぁ!!」
飛竜が再び咆哮する。
地上では、避難の完了を知らせる合図が旗で送られてくる。
「……よし、こっちはもう避難終わった。なら、いくぞ……!」
剛は叫ぶ。
「クレイ!! 翼を狙え!! ユーリ! 魔力干渉で奴の飛行を止めてやれ!!」
「了解した。……全力でいく」
「風精霊よ、巻き起これ! 《乱気の檻》!」
クレイの一閃が、飛竜の翼をかすめる。
そしてユーリの風魔法が、飛竜の飛行制御に干渉した。
「──落ちるぞ!」
ぐらりと体勢を崩した飛竜が、ゆっくりと、だが確実に地上へ降下をはじめる。
「いまだ……! 剛、決めろ!!」
「おっさんが締めるのかよこの流れぇぇぇぇぇ!!!」
叫びながらも剛は全身の力をこめて、飛竜の前に立つ。
飛竜の目が、わずかに揺れた。
「怖いか? おまえも──“燃える”のが怖いか?」
剛は、拳を握る。
「じゃあ、こっちも──“負けねえ”って言ってやるよ!!!」
──〔後編につづく〕




