第三章「仲間と絆」 第8話「飛竜襲来と、あの町の約束」 〔前編〕「帰郷、そして空を裂く影」
「懐かしいな……この景色」
小高い丘の上から見下ろすのは、かつて剛が“二度目の転生先”として訪れ、
一瞬で火炎に包まれて“火耐性+1”を得た村──レイスト村。
「何が“懐かしい”だよ、滞在時間10分だったくせに」
「いや……なんかこう、“焼かれた痛み”って記憶に残るんだよ……」
「そんな帰省エピソードあるか?」
剛たち“すべらない旅団”は、村の祭事護衛の任務を受けて、再びこの地を訪れていた。
レイスト村では十年に一度、火山神への“献火祭”が行われ、周囲の火竜を鎮めるという言い伝えがある。
「つまり、村を焼くのは神の気まぐれであり、火竜のせいでもある……」
「そういう曖昧なスピリチュアルってやつ、いちばんやばいやつだよな」
しかし今回は──
「……火山神が“沈黙”している、だと?」
村長の口から出た言葉に、剛たちは息をのんだ。
「三日前から、祭壇の火が一切灯らなくなった。
火竜に供える炎が、どこからも“湧いて”こないんだ。これは……“神が怒っている”印だ」
「つまり……」
「**火竜が“直接来る”**可能性がある。最悪の場合、“赤の飛竜”がこの村を焼き尽くす」
「うわー……これまたデカい厄災きた……」
「で、我々がやることは?」
「当然、“祭りの護衛”だ」
「いやいやいや! この状況で!? 絶対“護衛”ってレベルじゃねえだろ!?」
そんな剛の抗議もむなしく、祭り当日を迎える。
村は総出で準備に追われ、旅団の三人も祭りの警備、避難経路の確認、神殿の魔法陣の修復など、目が回る忙しさ。
「剛さん、こっちの避雷針の設置もお願いします!」
「避雷針!? 飛竜って雷も吐くのかよ!?」
「たまにです!」
「やめてくれそのランダム要素!!」
そして──
「……来るぞ」
クレイの呟きとともに、空が“叫び”を上げた。
赤い影が空を裂いた。
その姿は、火山の溶岩を思わせる赤黒い鱗、三本の尾、そして黄金の瞳。
“赤の飛竜”──この地に生きる伝説が、ついに現実のものとして姿を現す。
「村に……来る!」
「避難誘導開始! バリケード展開! 魔法支援班、位置につけ!」
「“護衛任務”ってなんだっけ!?」
剛の足元で、かつて彼が倒れて“火耐性+1”を得た場所が、ひっそりと黒く焦げていた。
「今度は……倒れないぞ」
彼の眼差しが、飛竜と交錯する。
──〔中編につづく〕




