第三章「仲間と絆」 第7話「迷子の王子と、100人の護衛依頼」 〔後編〕「王子護衛任務、いざ発動!」
「つまり……こういうことだったのか」
王都ギルドの仮設会議室にて、剛は報告書を前に、ため息をついていた。
結局、王子リリスは**「正式な許可なしに外出し、護衛百人をまいて一人で冒険者ごっこをしていた」**ということに。
──否、ごっこではなく本気の訓練だったらしい。
「ギルドの協力で、表向きには“訓練の一環”ということでまとめる方向らしいよ」
「よかったな、リリス。打ち首じゃなくて」
「うむ、我の外交スキルと剛たちの活躍がなければ、少なくとも“書類上は”生きてはいなかっただろう」
「いや、そこ笑顔で言うとこじゃないからな!? 結構ギリギリなんだぞ!?」
──だが、本当の事件はここからだった。
リリス王子の回収が終わり、帰路に着こうとしていたそのとき──
商人護送団の馬車が、街道で賊に襲撃されているとの急報が入った。
「くっ……あの馬車、王家の薬草運搬便じゃないか!? 兄上の命にも関わる物資が……!」
「なっ、マジか!?」
「頼む、剛! おまえたちの旅団で、援護してくれ!」
「……任された!」
◆ ◆ ◆
現場は、王都から東に2キロの峡谷地帯。
すでに炎上する馬車、暴れる馬、そして──黒装束の盗賊団。
「……数は十数人か。全員、短剣とクロスボウ……陽動がうまいな」
「王家の馬車を狙うなんて、よほどの組織だ」
「おい、来たぞ! “すべらない旅団”だ!」
「誰が命名したか知らんけど……やっぱ浸透してる……!」
クレイが剣を構え、ユーリが防壁を展開。
剛はリリスに声をかける。
「下がってろ、おまえは王子だ!」
「やだ」
「やだじゃねぇぇぇぇぇ!!」
「これは我の旅なのだ! せめて……このスリングショットで支援させてくれ!」
「支援武器それ!? やたら王家のクセが強ぇ!!」
戦いが始まった。
剛は突っ込む。
「スキル発動!《なぜか当たる踏み込み斬り!》!」
地味なネーミングとは裏腹に、繰り出された剛の一撃は盗賊の一人を吹き飛ばした。
ユーリの風魔法がクロスボウを逸らし、クレイの剣が一人、また一人を確実に無力化していく。
リリスは──
「いまだっ! スリングショット・急所狙い!!」
ぺちっ!
「うわっ! なんか痛ぇ!?」
「……うわ、意外と効いてる」
戦闘はあっという間に収束した。
ギルドの増援も到着し、盗賊団は全員捕縛される。
「ふぅ……間に合ってよかった……」
王子リリスは、剛の隣に立ち、満足そうに言った。
「我の旅、まだまだこれからだな!」
「いや、今日で帰れ。頼むから……」
「だが剛、もしまた“抜け出す”ことがあったら、そのときは──」
「護衛任務、また受けてやるよ」
そう言うと、剛は王子の頭をぐしゃぐしゃとなでた。
この日、「護衛任務」は無事に終わり、王子は王城に帰還。
“すべらない旅団”の名は、王家内部にまで広く知れ渡ることになる。
スキル取得:王族対応力+1/屋根上機動+1/護衛適性+1
称号取得:「王子の特別任務従者」




