表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したいおじさん念願の異世界転生するも悲惨だった件  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/146

第三章「仲間と絆」 第7話「迷子の王子と、100人の護衛依頼」 〔中編〕「屋根上と商店街と、王子の夢」

「屋根を走ってる!? マジで!? 10歳で!?」


 剛は屋根の傾斜を踏みながら、全力で追いかけていた。

 王都の露天街。その真上を、まるで猫のように軽やかに駆けていく金髪の王子。


「しかもなぜかこっちを煽ってくる!!」


「遅いぞ凡人ーっ! これでは私の護衛にはなれんぞ!」


「いや! お前を保護しに来てんだよこっちはああああああ!」


 


 その頃、下ではクレイとユーリが“避難誘導と商店街の混乱制御”に回っていた。


「上で追いかけっこしてる剛のせいで……露天商の看板が吹っ飛んだ」


「落下物処理スキル……そろそろ覚えた方がいいかもしれない」


「たしかに剛、スキルツリーの方向性、間違えてるかもな……」


 


 一方、逃げる王子リリスはなおも快調。


「ふはは! 冒険者に必要なのは判断力と身軽さと、そして美学だ!」


「うるせぇぇぇぇぇ! こっちは美学より命綱が欲しいわぁぁぁぁ!」


 


 ようやく、屋根の終点──教会の塔に差しかかった。


 そこに飛び移ろうとしたリリスが、バランスを崩す。


「うっ……!」


「危ない!!」


 剛は思わず、飛んだ。


 屋根から身を投げるようにして──落ちるリリスを受け止め、二人して下の干し布へと突っ込んだ。


 


「がはっ……いててて……」


「……あっぶなぁ……」


 二人は干し布の中で転がりながら、息を整える。


 


 そして──


「……ふっ。今の受け止め方、悪くなかった。合格だ」


「なに基準だよ!? なんの試験だったんだよ!!」


「我が護衛適性試験に合格した者には、王子直々の指名が与えられる」


「ちょ、待て……ってことは──」


 


「うむ。貴様、しばらく我の旅のお供をせよ!」


「なんでそうなるぅぅぅぅぅ!!?」


 


 騒ぎを聞きつけたユーリとクレイが合流する。


「……お疲れ。で、どうだった?」


「この王子、護衛じゃなくて“同行者”を探してるだけだった……」


「旅ごっこですか?」


「ごっこって言うな! これは本気の訓練なのだ!」


 


 リリスは、小さな胸を張って言う。


「私は冒険者になりたい。王である前に、まず“外の世界を知る”者になりたいんだ!」


「理想だけはデカいなぁ! でも気持ちは……ちょっと、わかる」


 


 クレイがぽつりとつぶやく。


「……だから護衛百人を巻いて、一人で出てきたのか。ずいぶんと無鉄砲だ」


「だが、私には信じていた。“一人くらい、わかってくれる者がいる”と」


 


 リリスの目は、まっすぐ剛を見ていた。


「なあ。おっさん──いや、“剛”。おまえ、転生者なんだろ?」


「……は?」


「“死にかけて強くなる”やつ、何度も見てるから。あれ、普通の人じゃできない」


「……!」


 


 王子の観察眼に、一同は無言になる。


 だが、リリスはニカっと笑って言った。


「だから信用した。おまえは、本当に“冒険”を知ってるやつだって!」


 


──〔後編につづく〕

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ