第1章「夢叶う日」 第4話「第三回転生、また即死(ワームに喰われる)」
「おかえりなさいっ!」
白い空間に響き渡る、やたら元気な声。
神様ヴァロスが、またもにっこり笑って両手を振っていた。
だがその笑顔には、もはや完全に「実況者」みたいなノリが混じっていた。
「今回の転生、平均生存時間6.1秒! いやあ、予想より早かったですねぇ!」
「お前、実況するなよぉおおおおおおお!!」
相田剛、三度目の死。
異世界転生おっさん、再び白い空間に逆戻り。
「飲み込まれた! 俺スライムに飲み込まれたんだぞ!?」
「お見事でした! そしておめでとうございます!」
【新スキル獲得:溶解耐性+1】
「誇らしげに言うな!! スライムの胃液に溶かされた結果、ちょっとだけ耐性がついたってか!? どんな地味成長だよ!!」
「ですが剛さん、耐性は積み重ねです。次はもう少しだけ長く生きられるかもしれませんよ!」
「そんな“次”がすぐ来るのおかしいだろ!!! 俺まだ焼かれた痛みと溶かされた記憶でメンタル削れてんだぞ!!!」
「では行きましょう、第三回転生!」
「聞けぇええええええええ!!」
ヴァロスの手が光り、剛の体がまたもや白い光に包まれていく。
もはやお約束。もはや罰ゲーム。だが運命は止まらない。
「いやほんと! 一回、ゆっくり準備時間とか! 転生前オリエンテーションとか!! くれぇえええええええ!!!!」
◆ ◆ ◆
次の瞬間、剛は地下洞窟のど真ん中にいた。
「お……? 明かり……土のにおい……今回は地面ある……生きてる……!」
人生初の“ちゃんとした着地”に、剛は感動していた。
暗いけど、穴ぐらっぽいけど、スライムのぬるぬるもない。
「いける……今回はいけるかも……!」
そう思った矢先、地面がぐるりと震えた。
「……なんか、今の振動、やばくね?」
次の瞬間、地面が**ズボオオオォォンッ!!**と音を立てて盛り上がった。
「なにこれ!? 穴!? ……って口!? 口ぉおおおおお!?」
出てきたのは、巨大な地中ワームだった。
長さ15メートル、口は鋭い歯でグルグル回転、砂を巻き上げながら空中に跳び上がる。
「なんでこの世界、いきなりボス級が出てくるの!?」
ワームの顎がバカッと開いた。
「やめろぉおおおおおおおお!!!!」
叫ぶ暇もなく、剛は丸呑みされた。
──噛まれるでもなく、殴られるでもなく、
ただひと呑みにされて、第三の転生人生が幕を閉じた。
──ピロリン。
【あなたは死亡しました】
ワームによる嚥下ダメージのため即死
新スキル獲得 → 【嚥下耐性+1】
◆ ◆ ◆
「おかえりなさいっ!」
白い空間に、もはや聞きなれた挨拶が響く。
神様ヴァロスは、コーヒー片手に微笑んでいた。
お前、絶対くつろぎすぎだろ、というツッコミはもはや野暮だ。
「さあ! 今回の成果はこれです!」
火耐性+1
溶解耐性+1
嚥下耐性+1
「なあ、俺って今……何の役に立つんだろうな……?」
「たぶん、煮られても焼かれても呑まれても、ちょっとだけ我慢できる男です!」
「なにその地味に不死身みたいな方向性!!!」
「では次回も期待しておりますっ!!」
「うあああああああああああああああああ!!!!」
──第4話・完──