表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したいおじさん念願の異世界転生するも悲惨だった件  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/146

第二章 第5話:「歩き出す、その一歩だけで」 〔前編〕「盗賊団、ふたたび」

朝焼けの小道を、二人の旅人が歩いていた。

 一人は、どこにでもいる中年男――いや、どこにでもはいない“101回目の転生者”・剛。

 もう一人は、ドジだけどまっすぐな心を持つ少女騎士見習い・メル。


 そして彼らの目的は、ただひとつ。


 「静かに、ひっそり、誰にも見つからず生きること(by剛)」


「ねぇ剛さん、今日のお昼ごはん、私が作ってもいいですか?」


「おう。爆発さえしなけりゃなんでもいいぞ」


「むぅ、私だって料理くらいできますー! 前に騎士団の食堂で褒められたんですから!」


「それ、空気読んで褒められてた可能性ない?」


「ひどい! いっそ転倒耐性で滑ってください!」


「それもう7個ついてるから……」


 そんなアホなやり取りをしつつ、二人は森の中の細道を進んでいく。


 だが、その背後。


 木々の影に、鋭い視線がいくつも潜んでいた。


「……いたぞ。あの女騎士と、謎の中年男」


「女の方は王都の“スパイ”疑惑、あの男は噂の“転生者”……両方まとめて連れてけば、懸賞金はうなるぜ」


「へっ、楽な仕事だ。どうせ田舎の旅人だろ。ひと思いにな──」


 ごそり、と葉が鳴る。


「……おい、気づかれたか?」


 


 ──そのときだった。


「──で、あの時は“泥耐性”が初めて役に立った瞬間だったんだよ。沼に沈んで気絶したけど、死ななかった」


「それ……本当に役に立ってます……?」


 剛とメルの他愛もない会話に、盗賊たちはピクリと眉をひそめる。


「な、なんだ? ……あの男、スキルの話してる……?」


「“泥耐性”? ……まさか、あれは……高位型の、毒沼封じ!?」


「スキル読み取りの魔眼使え! 相手のスキル構成を──」


 ごそっ。


「あっ、今“盗賊団の皆さん、ごそっごそっ”って音がしたぞ」


 剛の声が冷静すぎて、逆に全員が硬直した。


「おい、バレて──」


「メル、伏せろ」


 剛は一歩、踏み出して。


 ──その地面が、ぬるっ、と滑った。


 だが彼は、完璧なバランスでピタリと止まった。


 見えない段差、湿った葉、そして傾斜。


 普通なら盛大に転ぶはずの状況で、剛は転ばなかった。


 ──転倒耐性+7。

 死にスキルの果てに得た奇跡の足運び。


 


「──よし。そこだな」


 剛が指をさすと同時に、背後の茂みから盗賊たちが一斉に飛び出してきた。


「やるしかねぇッ!」


「くたばれぇえええ!!」


「おっさんには興味ねぇ、女を渡せ!!」


「……誰が渡すかッ!」


 メルが叫ぶよりも早く、剛が一歩前に出ていた。


 その手には武器も、魔法もない。


 ──ただの、おっさんの構え。


 だが盗賊たちは本能的に悟った。


 「こいつ……“転生者の中でも異質”だ……!」


 


「メル。俺は強くない。だけど──」


 剛は静かに笑った。


「“転んで覚えた痛み”だけは、山ほど持ってる」


「……!」


 次の瞬間、盗賊たちが剛に向かって一斉に飛びかかった。


 その続きは──


 


──〔中編へ続く〕

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ