表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したいおじさん念願の異世界転生するも悲惨だった件  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/146

第二章 第3話:「スライムの村襲撃と英雄疑惑」 〔後編〕「静かに暮らしたいだけなのに」

宴の翌日、剛はひとり、村はずれの林の中にいた。


「……ああ、静かだ。木漏れ日が優しい……。やっぱり俺には森暮らしが似合う」


 村での英雄騒ぎに耐えかね、こっそり脱出してきた剛。

 鳥の声、風の音、虫の羽音……まさに癒しの大自然。


「こうして一人、誰とも関わらず……二度と誰にも“勇者”だのなんだの言われない人生を──」


「──剛様ぁぁああああ!! どこですかぁああああ!!」


「……なぜだ」


 レト少年の絶叫が森に響いた。


 遠くからドタドタと音が近づき、数分後、ゼエハア言いながらレトが現れる。


「師匠! 逃げたらダメです! 王都から勅使が来てます!!」


「……なんでだよ!? 俺、何もしてないだろ!? 本当にスライムを殴っただけだぞ!?」


「だからですよ! 素手で殴って勝ったからですよ! それが問題なんですよ!」


 


 そうして引っ張られるように村に戻ると──


 そこには、豪華な馬車と金色の装飾をまとった一団が到着していた。


「勇者・アイダ・ツヨシ殿──」


「名前まで勝手にカッコよくすんな!!」


「我がグレイム王国にて、“魂の盾”としての就任をお願いしたく、陛下直々の勅命にございます」


「聞いてない、怖すぎる、俺ただの草むしりおじさん!!」


 


 村人たちが一斉にひざまずく中、剛だけが困惑と焦燥の極みにいた。


「いやマジで、スライムって……基本、攻撃しなけりゃ向こうも襲ってこないタイプのモンスターだろ!? なんでそれを俺がパンチで倒しただけで“魂の盾”とか言われてんだよ!!」


 使者は涼しい顔で言った。


「勇者とは、己の宿命を知らずとも、その行動が歴史を動かすものです」


「それただの事故の言い換えだよね!?」


 


 剛は村の外れで再び天を仰ぐ。


 ルナの石探し、スライム討伐、村人の尊敬、そして王国の使者──

 静かな人生を夢見ていたはずの彼の足元は、着実に“勇者街道”へと引っ張られていた。


「……こうなったら、もう次の村へ逃げるしかない……」


 背後からレトの声が飛ぶ。


「師匠ー! 明日からの訓練メニュー考えました! “対・巨大スライム想定 腕立て5万回”です!!」


「なぁレト……それは修行じゃなくて、拷問だぞ」


 


 ──かくして、“転生101回目のおっさん”はまた一歩、望まぬ英雄譚の渦中へ。


 彼の願いはただ一つ。


 「静かに! 平和に! 誰にも注目されずに生きたい!!」


 しかし運命は、彼を決して“そっとしておいてはくれなかった”。


 


──第3話・完──

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ