転章:スキル獲得の向こう側 「第11~100回転生ダイジェスト」〜完全に自信喪失するおっさん〜
何度死んでも立ち上がる。
何度立ち上がっても、死ぬ。
それが、相田剛(50)の転生人生だった。
第11回転生──【即死:魔導砲の試し撃ちに巻き込まれる】
獲得スキル:魔法耐性+1
剛「俺、村に来ただけなんだけどな……」
第17回転生──【即死:野生の魔鳥に連れ去られて空中から落下】
獲得スキル:猛禽耐性+1
剛「どの角度から死ねば気が済むんだよ俺の人生……」
第25回転生──【即死:温泉に浸かっていたら底が溶岩だった】
獲得スキル:高温耐性+1
剛「リラックスして死ぬって何!?俺何!?タマゴ!?!?」
第38回転生──【即死:友好的に近づいたNPCが暗殺者だった】
獲得スキル:裏切り耐性+1
剛「……信じるって、なんだっけ……?」
第47回転生──【即死:罠宝箱から毒針+火炎放射+落とし穴】
獲得スキル:宝箱耐性+1
剛「開けるなって書いとけよォォォ!!」
第56回転生──【即死:治癒の泉、実は“吸魂の泉”】
獲得スキル:霊魂吸収耐性+1
剛「死ぬ直前に“癒してあげる”って言われた俺の気持ち考えろやあああ!!」
第70回転生──【即死:絶壁登攀チャレンジで滑落→即死】
獲得スキル:斜面耐性+1
剛「なんで俺は毎回“死ぬ確定イベント”に遭遇するんだよぉぉ……」
第89回転生──【即死:旅人に扮した上級ドラゴンにあいさつ→炎ブレス】
獲得スキル:龍耐性+1
剛「“こんにちは”って言っただけだよ俺!?」
第99回転生──【即死:トイレ行ってたら突然“トイレモンスター”出現】
獲得スキル:衛生トラブル耐性+1
剛「もう、どこで死んでも不思議じゃねえよぉ……」
──そして。
第100回転生──【即死:空から降ってきた流れ星に直撃】
獲得スキル:天体衝突耐性+1
剛「このスキル、一生使うことないだろ……」
◆ ◆ ◆
そして、100回目の白い空間。
さすがの神・ヴァロスも、今回は表情を曇らせていた。
「……剛さん……」
相田剛は、もう立っていなかった。
地面に膝をつき、頭を垂れたまま、口を開かない。
「次で、101回目です。……転生記録保持者です」
「…………」
「スキルも、たくさん溜まりました。もう、即死しない身体に限りなく近い」
「…………」
「あと1回だけ、やってみませんか? 今度こそ、“物語”が始まるかもしれません」
ようやく、剛が口を開く。
「……俺、もう……何のために生きようとしたのか……わからなくなってきたんだ」
その目は、もはや**“死ぬのが当たり前”になった人間の目**だった。
「転生して、また死ぬんだろ? どうせ。誰にも会えない。何もできない。俺って、なんだったのかな……」
ヴァロスは静かにうなずいた。
「……だからこそ、次があるんです。あなたは、“ここまで生き残ってきた人間”なんですよ」
「生きてねえよ、死にまくってるよ俺は……」
「いいえ、死ぬたびに、“生き残れる身体”になっている。それだけは事実です」
長い沈黙のあと、剛はようやく顔を上げる。
目に、ほんのわずかだけ光が戻っていた。
「……じゃあ、次は……“死なないこと”以外に、何か……したいな」
ヴァロスは笑った。今度は、どこか優しく。
「それは、“人生”ですね」
「……皮肉だな……」
そして。
「いってらっしゃい、101回目の転生。今度は、あなたが“誰か”と出会う番です」




