第7話 友人との協力
午後の授業が終わるとやっと新島が起きた。
「ふわぁー……よく寝た。さてとクラシス回収して俺んちいくぞ、光」
「帰ろうとしてたんだけど」
「いいからいいから!」
特に帰ってやることもない。たまに寄り道して買い物したりしてから帰るが、用事があると嘘をつくこともできず新島に引きずられるように連れて行かれる。その様子を鹿山は腕を組み、机に足をあげてその二人をにらみつけるように見ていた。
「回収ってどこにいるかわかるの?」
「屋上に置いてきたから、そのままいるだろ」
「どこかに移動してるってことは考えないの?」
「まさか。あいつ飛べねえから移動しねえよ」
「アルベールは飛んでたけど」
「誰しも苦手なことはあんだろ」
アルベールはよく飛んでいる。羽があるわけでもなく、空中を自由に動き回っていたが、クラシスは出来ないようだ。人それぞれ得意なものがあるらしい。アルベールはどういう方法で飛んでるかわからないが、クラシスは歩いて移動するのだろう。
屋上へ行くとアルベールとクラシスはまだ会話していた。光に気づいたアルベールはふわふわと飛んで光の肩に乗る。新島はスタスタと歩いてクラシスをブレザーの胸ポケットへと雑に入れる。
「授業は終わったのか竜之介。ちゃんと授業受けたのであろうな?」
「ああ、もちろんだ」
ポケットから新島の顔を覗くクラシス。
「竜之介、本当のことを言え。寝ていたであろう? 顔に跡がついてるぞ」
「なっそんなはずは? っててめ、騙したな!」
クスクスと笑うクラシス。新島は一呼吸して落ち着かせていた。
「光君は授業いかがでした?」
「いつも通りだよ」
肩から光の顔を覗くアルベール。光は顔を動かすことなく淡々と答えた。アルベールはなぜかしゅんとしたようだった。
「んじゃ、俺んちいくぞ。来いよ」
さっさと歩いて行く新島に光はひょこひょこついて行くのだった。
新島は徒歩通学であり、光は自転車を押しながら十五分ともに歩いた。そして川沿いの住宅街にたどり着いた。二階建ての一軒家の前で新島の足は止まった。
「ここが俺んち。今は誰もいねえ」
そう言って制服のベルトからぶら下げていた鍵を取り出して家の鍵を開ける。
「まあ入れよ」
ここまで来てしまったので自転車の鍵をかけて家に上がった。そして新島の後をついて行く。
二階に新島の部屋があった。ビニール袋や漫画本などが散乱している。
「散らかってて悪いな。そこら辺に座ってろ。飲み物持ってくる。クラシスはここで待ってろ」
「了解だ」
ポケットからクラシスを出して床に置いた。クラシスは了承して歩き出す。新島は階段を降りていった。
「まあ座るのだ、アルベールの契約者よ」
クラシスに一枚だけ床にあった座布団を示されたので、そこへ正座して座った。親戚以外の誰かの家にお邪魔するなんて今までになかったため、緊張もあって正座してしまう。
「もっと気楽にしてくれてかまわんぞ? まあ、俺の家じゃないんだが」
「ふふっ、クラシスは相変わらずな様子で安心しました」
「おうよ!俺は俺だからな!」
「おーい、飲み物持ってきたぞー」
部屋に戻ってきた新島は、お盆にカップ二つ。どうやらコーヒーのようだ。
「砂糖いるか?」
「ブラックで大丈夫。ありがとう」
新島は片手にお盆を持ったまま、たたんであったテーブルを器用に広げてお盆を置いた。
「竜之介、スマホを出すのだ」
「そうだったな」
物置となっている学習机の上の隅にあったようで、とってから光とテーブルを挟んで反対にあぐらをかいて座る。
クラシスは器用に新島の足を登りテーブルの上に乗ってスマホを出すよう指示した。
「光君もスマホを」
アルベールに言われて光もポケットからスマホを取り出してテーブルの上に置く。アルベールは光の肩からテーブルへと飛び降りた。
二つのスマホの画面は暗かったが、自然に画面のロックが解除されてworld battleのアプリが立ち上がった。画面を見比べると互いに玉座のようだが、雰囲気が異なる。
「これは自分の国の玉座なのです。いつも座った場所……懐かしいです」
「そうだったのか。クラシスは何も言わなかったぞ。なあ?」
「細かい説明したところで竜之介は分からないだろう? 追々説明しようと思ってたところだ」
「では、ここのボタンから同盟を選んで下さい」
アルベールに言われた通りに光と新島はボタンを押す。画面には『同盟の確認』と『同盟を結ぶ』、『同盟を破棄する』の項目がでた。
「同盟を結ぶの項目を選択してください」
言われた通りに選択する。すると光の画面には『グレッザ王国と同盟を結びました』と表示された。
「これで僕たちは協力者です。お互いを助け合うことができます。画面の中の国も、貿易や交流ができるようになるんです」
アルベールは得意気な顔をしている。
関心していたクラシスと新島だったが、ここで疑問が生じたようで、新島が口を開いた。
「破棄するってあるんじゃすぐ破られるんじゃねえのか?」
「破棄されてしまった場合には相手に通知がいきます。破棄する前にスパイを送り込む戦法もありますが……」
「怖いもんだな」
新島曰くクラシスは頭がよくない。同じ高校に通う光と新島も頭はよくない。アルベールが一例としてあげた戦法に納得する三人だった。
「あくまでも一例ですよ! そのような方法をとられると困りますから。僕は争いたくないのです……」
「そうだね。すごいいい国だもんね」
光はアルベールを優しい目でみた。アルベールもニコニコしている。
「竜之介、俺の国もいいところだろう?」
「いや知らねえよ。こんな怪しいアプリ開かなかったし」
「何で見てないのだ! 俺と契約して1週間は経っているだろう! その間に何をしていたのだ!」
新島の発言に怒ったクラシスは何度目かの蹴りを食らわせている。小さいクラシスの攻撃は新島には響かないようで何食わぬ顔をしている。
「スマホ見ないし、しゃーない。それよりも、何したらいいのか教えてくれよ」
「俺もよくわかんない……」
急に光に話を振られて慌てる。
「光君がよければ、僕の方から説明致します」
「お願い」
アルベールが光に代わり、詳細な説明を始める。
「四月一日より王とその契約者による戦いが始まります。この戦いが僕たちの国にも影響を及ぼします。負ければ勝者の言うことを聞かなければなりません。国がなくなることだってあります」
アルベールは暗い顔をした。新島はそこへ質問を投げかける。
「どうやって勝ち負け決めるんだ?」
「メインとなるのは力です。王の死亡、契約者の死亡、もしくはどちらかが降参するか、そのいずれかで勝敗は決められます。王は契約者へ力を貸すことで勝敗を決めるのです」
『死』という言葉に部屋の空気が暗くなった。




