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生理痛でも冒険の旅がしたい!  作者: 御餅屋ハコ
生理痛でも冒険の旅がしたい! 第一章
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第一章  09 生理用品


  09 生理用品


 リュックの中には、生理用品をまとめて入れた袋がある。かさばるし、使わない時期は使わないので隔離してあるのだ。薬は口に入れる物だから別の袋で、小さめだからリュックの中でよく迷子になる。

 ミーヤは生理用品入れをまずベッドの上に置く。

「じゃ、オレも部屋でゆっくりしてるわ。ナプキンも取り替えとくかな」

 マアチはベッドから立ち上がり、部屋を出て行った。

 ミーヤはベッドの掛け布団をどけ、生理用品入れから大きめの布を取り出す。縦横1エストの正方形で、油で防水加工をした布だ。これを下半身の位置に敷いて寝れば、経血が漏れてもベッドまで血まみれにならないで済む。

 雨具には、『撥水の魔法』をかけた布もよく使われる。『撥水の魔法』をかけた布は、雨粒以上の大きさの水は通さないし、ちょっと振り払えば水滴は全て落ちる。だが、風は通すし、汗で蒸れた自分の熱気も通る。薄い布に『撥水の魔法』をかけて傘やレインコートを作れば、軽くて通気性のいい快適な雨具ができる。その分、高いが。

 ミーヤのリュックにも『撥水の魔法』のかかったレインコートがあるが、800テニエルもした。

 ベッドに敷いたのは汚れ防止のただの防水布で、魔法は使われていない。ゴワゴワして厚手だが、尻の下に敷いて寝るのだから、あまり薄くてくしゃくしゃになっては意味がない。羽織るのではないから少しぐらい重くてもいいし、何より安い。これは一枚100テニエルだった。

 それから、木綿のナプキンを取り出す。

 人間が魔法を使えるようになり、綿花の栽培も広まった。綿花とは、ふわふわの綿毛ができる植物で、綿花から布を作ると、肌触りのいい布が出来る。これを木綿という。と、読み書きの教本に載っていた。

 心地のいい木綿は人々に好まれ、様々な織り方や編み方が開発されていった。そして、伸びのいい木綿で下腹部を密着するように覆う下着、ショーツも作られるようになった。

 ショーツの胴回りにはゴムが入っており、上げ下げで紐を結んだりほどいたりする必要がない。

 ゴムも、魔法のおかげで広く栽培されるようになった植物だ。

 本来は暖かい国に生える植物だが、ゴムの木の樹液を加工したゴムは、伸び縮みするので様々な用途に使える。需要が多いので、栽培方法が模索された。

 やがて温室という、植物を育てる為の建物が考え出された。魔法で火や水を使い、建物内の温度や湿度をコントロールして、暖かい国の植物を育てるのだ。

 そしてゴム製品は広く使われるようになった。これも読み書きの教本に載っていた話だ。

「寝ちゃうかもしんないから、一番大きいのにしとくか」

 ナプキンには複数の形状がある。出血量によって使い分けるためだ。

 ショーツも、普段は薄手やゆったり目など、好みで選べるが、生理期間は専用のサニタリーショーツを履く。厚手で体にしっかりフィットするショーツでないと、ナプキンがずれて血が漏れるからだ。ミーヤは数日前から出血の気配を感じていたので、すでに履いている。

 ミーヤはまず、ホルダーを手に取った。

 ホルダーは、縦長のひし形や十字形をしている。厚手の布製で、長い方をショーツのクロッチに乗せて使う。短い方はショーツに固定するための部分で、先端にボタンが付いているので、クロッチの反対側に回して止める。

 夜用、つまり寝転がって長時間過ごす場合は、経血が下に流れるので、ホルダーも尻まで届く長い物を付けなければならない。それでも血が漏れることはあるが。ミーヤは縦30フィンクのホルダーを選んだ。

 ホルダーの上下には、ゴムバンドが付いている。別の布を挟むためだ。

 挟むのは、ハンカチのようなプレーンな四角い布だ。三つ折りや四つ折りにしてホルダーに載せ、ゴムバンドで挟む。布が重なることで吸収力が増え、体にもフィットしやすくなる。また、経血がホルダーまで染みなければ、この四角い布を取り替えるだけで済む。

 出血が軽い日なら、経血が染みるのが、折りたたんだ四角い布の上部だけのこともある。その場合は、血のついていない面を上に畳み直せば、新たな布に取り換えなくても、まだしばらく過ごせる。

 そして洗うときも、折りたたんだ布は広げて洗いやすいし、乾くのも早い。ホルダーは厚いので、少し手間がかかる。

 数日前からミーヤは、縦20フィンクぐらいの、中サイズのホルダーに薄手のプレーン布を重ねて使っていた。終わりかけならば、量がわずかなことがわかりきっているので、もっと小さいナプキンでいい。ホルダーなら15フィンクぐらい。ゴムバンド無しの、ただのひし形のナプキンでもいい。だがこれから始まる場合は、今は出血量が少なくても、いつ大量出血するかわからない。だから中ぐらいのサイズを使わないと安心出来ない。

 この数日、身構えてずっと準備していたが、空振りだった。それでもナプキンに軽い出血や汗は吸われているので、毎日洗わなければ不衛生だ。空振りだったのに何枚もナプキンを洗うのは面倒だと思いながら、ミーヤは過ごしていた。

 今朝、ようやく鮮血を見たので、ホルダーはそのまま、プレーン布だけ、20フィンク角で二枚縫い合わせてある、やや厚手の物に替えた。しかしこの出血の感じだと、このナプキンで寝たら確実に血の海が出来る。だから腹が痛くても、厚手のナプキンに取り替えてからでないと横になれない。

 ミーヤは30フィンクのホルダーに、同じサイズのプレーン布を三つ折りにしてセットした。こうしておけば、後はトイレでショーツに装着するだけで済む。

「あと、これこれ」

 ミーヤは最後に、布袋を取り出した。布団に敷いたのと同じような、防水加工の布袋だ。

「今は洗いたくないから、こっちだ」

 血の付いたナプキンを取り替えても、常に洗濯出来る状況とは限らない。だから一時的に保管する袋が必要になる。袋は経血が染みないように防水加工で、匂いも漏れないように、紐でしっかり口を塞げる構造になっている。

 出先のトイレには、数枚のナプキンが入る程度の小型サイズを持っていって使う。宿や家など、荷物に余裕がある場所では、夜用が数回分入るサイズを使う。

 ここ数日は小型サイズで良かったが、これからは大きい布袋の出番だ。

「さー、トイレ行くか」

 ようやく準備を終え、ミーヤは部屋を出た。


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