第二章 12 街道と貸馬屋
12 街道と貸馬屋
ライの町は地面を石畳で舗装しているが、町の外はむき出しの地面が広がっている。
だが、人の行き来で踏み固められた街道がある。
町の北から伸びるのは、北の町、シャバシャに続く街道だ。シャバシャはフルーエという大きな湖のほとりにあり、定期的に船が出入りする港町だ。
ライの町から港町シャバシャへは、徒歩で三日ほどかかる。ライの町の真北に小さな山があり、街道は山を西から回り込んで北へ向かう。
北の山は、はっきりした名称を付けるほど大きくはない。だが丘よりは大きく、浅いところには弱い魔物、深いところにはそこそこ強い魔物が出る。そして、ライの町から徒歩で一時限程度の距離、という、魔物狩りスポットとしてちょうどいい山だ。
山の近くまでは、街道を歩いて行く。
「他の人も行くね」
ミーヤが街道を眺めながら言う。街道には、ミーヤ達三人の他に、いくつかの魔物狩り屋のパーティが見えた。
「昨日まで雨だったもんな。魔物狩り屋じゃ無さそうな人達も多いな。あ、馬車も行くぜ」
街道には、武装していない人々も歩いている。シャバシャへ行く商人などだろう。
そして、馬車。
町から町への移動時間を短縮したい人のために、『貸馬屋』という施設がある。
貸馬屋では馬車を借りられる。馬に乗れる人は鞍付きの馬だけ借りることもできる。
「馬車、乗ってみたいけど高いよねえ」
ミーヤが苦笑する。ライの町で、貸馬屋を覗いてみたことがある。町の外れにあり、馬小屋や事務所を構えた、大きめの施設だ。
入口には料金表が貼られており、ライからシャバシャまでは、一人3,000テニエルから、とあった。
「最低料金で3,000テニエルだろ? ちょっと手が出ねーよな」
一緒に貸馬屋を覗いたマアチもうなずく。
「でも、宿代とか考えれば、そこまで高くもないんだよ」
そんな二人に、ボウが説明する。
「街道には休憩所がある。誰でも一日歩けば着く程度の距離には作られてる。野宿が嫌ならそこで宿屋に泊まるけど、この街道沿いだと一泊500テニエルの宿しかないんだ。
70テニエルの弁当を持って、ライを出発。休憩所で夕飯100テニエル食べて、500テニエルで一泊。
翌朝、朝食50テニエル、弁当を50テニエルに抑えて出発する。一日歩いて、次の休憩所に着く。お腹が空くから、夕飯150テニエル食べて、500テニエルの宿に泊まる。
翌朝、朝食50テニエル、弁当100テニエル買って、一日歩くと、ようやくシャバシャに着く。
それから、歩き疲れて日暮れも近いのにシャバシャで安宿を探して、空きがあればいいけど、無ければ600テニエルぐらいの宿に泊まって、疲れて夕飯も150テニエル食べて、ってなると、合計で2,320テニエルだよ」
ボウはライからシャバシャへ行ったことがあるので詳しいのだ。
「馬車の速度は徒歩の倍ぐらいだから、馬車なら、ライを朝出発して、最初の休憩所で昼食50テニエルぐらい。夕方に二番目の休憩所に着いて、歩かないからそこまでお腹も減らなくて、夕飯70テニエルぐらい。そして一泊500テニエル。
翌朝、朝食50テニエル、弁当50テニエルで、昼ぐらいにシャバシャに着く。明るいうちに安宿を探して、一泊400テニエル、夕飯90テニエルぐらい。それに馬車代3,000テニエル足すから、4,210テニエルってとこか。確かに徒歩よりは高いけど、二日で着くし、疲れないからね」
「リアルな話だー。やっぱり経験者は違うね」
ミーヤが感心する。
「でもやっぱり高くね? 2,000テニエルぐらい余分にかかるじゃん」
そう言う妹に、ボウが答える。
「御者や馬の料金も含まれてるもの。休憩所にも貸馬屋の支店があるから、御者や馬はそこで休んだり交代したりするんだ。その分のお金や、馬車のメンテナンス代、貸馬屋の利益を考えれば妥当な値段だよ。
乗り心地のいい馬車、屋根付きとか、タイヤのゴムがしっかりしてるとかだともっと高いし、ライからシャバシャまで一日で着く、特急の馬車も高い。でも、貸馬屋が潰れると徒歩しか移動手段が無くなるから、いざというときに困るだろ? だから、適正価格で儲けを出して、施設を維持して欲しいと俺は思うよ」
「……なるほどなー。兄貴すげーや、大人だなー」
マアチはボウを見上げる。
「二人も、しばらく魔物狩り屋やってればこういうこと考えるようになるよ。嫌でもお金の計算しなきゃいけないから」
ボウは笑った。




