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生理痛でも冒険の旅がしたい!  作者: 御餅屋ハコ
生理痛でも冒険の旅がしたい! 第二章
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第二章  07 魔法水筒や魔法

  07 魔法水筒や魔法


 ミーヤの部屋のベッドに、ミーヤとマアチが並んで座る。

 ミーヤは魔法水筒を取り出す。腕一本ぐらいのサイズの、金属の筒状の水筒。蓋を外すとコップになるのは一般的な水筒と同じだ。

 違うのは、筒の内側、水を溜める部分に、『残水の魔法』がかかっていることだ。

 人間が使う魔法は、『人間の精神力で、一瞬だけ、その場に世界のエネルギーを呼び出した』状態だ。だからすぐに消える。

 『世界のエネルギーをずっと出現させ続ける』ためには、人間ではなく精霊の力で、世界に変化を起こしてもらわないといけない。

 だから様々な『精霊の力を固めたアイテム』が存在する。『火石燃料』、『離血浄の洗剤』、『汚水分離液』など。これらは、魔法が使えない人でもすぐに使える。

 魔法水筒は、『精霊の力で、人間の魔法をずっと存在させるアイテム』だ。水筒の内側に、塗料でコーティングするように、精霊が『残水の魔法』をかけている。コーティングは薄いのでいずれ剥がれてくるが、塗り直しが可能だ。

 町には魔物狩り屋向けの道具屋が一つはある。そういう店には、精霊がいる。『残水の魔法』を使える小さな精霊だ。

 その精霊が、普通の水筒を『残水の魔法』で魔法水筒にしたり、コーティングが剥がれた水筒を修繕したりする。

 普通の水筒は300テニエルほどだが、魔法水筒は3,000テニエルほどの価格になる。修繕は1,000テニエル前後。

 やや高いが、価格に見合った便利さがあるので、ミーヤもこうして買っている。

 精霊を所有するには、人間が国に申請を出し、国から許可をもらう必要がある。そして毎月、国に税金を払う。だからそれが価格に反映される。

 マアチの実家も、マッチ工場なので精霊を所有している。

 小さな木の棒と箱に、『着火の魔法』をかける精霊だ。棒と箱をこすり合わせると、誰でも火が付けられる。

 もちろん毎月税金は払うが、使える魔法が一つの精霊は、税金も一番安い。

「綺麗な水が出せるといいけど……」

 ミーヤはコップを横に置き、水筒を両手で握って中をのぞき込んだ。今、中は空だ。

 マッチは誰でも火を付けられるが、魔法水筒は、水の魔法を使える人間がいないと役に立たない。

 そして、水の質は、魔法の力量に左右される。

 初級の水の魔法は、とにかく水を出すこと。どんな水でも、魔法で水さえ出せれば初級の水の魔法を習得したと言える。

 ボウは、魔法屋に通っても水を出すことが出来なかった。長期間通えばいずれ習得出来たかもしれないが、魔法屋の代金は高い。

 魔法屋の精霊は、人間に覚えさせるために様々な魔法に対応している。だから税金が高く、魔法屋に通う料金も高いのだ。

 マアチは、水を出すことは出来た。だが、水よりも火の魔法が得意だとわかり、火の魔法を覚えることにした。

 だから、水の魔法を上達させたのは、三人の中ではミーヤだけだ。

「ミーヤは中級を習得してるだろ。大丈夫だよ」

 中級の水の魔法、といっても様々な種類がある。しかしどれも、初級より水の質や量が上がることに変わりはない。

 ミーヤは魔法屋に通い、濁りのない水を多く出せるように訓練した。

 だから飲用に適した水は出せるはずだが、今は本調子ではない。毒物が混ざったりはしないが、初級レベルの、雨水や濁った川のような水しか出せないかもしれない。

「……とにかく、やってみるよ」

 ミーヤは魔法水筒を握り、精神を集中した。

 ……私は綺麗な水を出せる。魔法屋に通って習得した。何度も成功してる。大丈夫。

 ミーヤは自分自身に言い聞かせる。そして、水筒のなかに綺麗な水が満ちることをイメージする。

「……水よ!」

 ミーヤの魔法が発動し、魔法水筒に水が満ちる。

「やったぜ!

 隣のマアチが声を上げる。

「できたけど……味はどうかな」

 ミーヤは水筒からコップに水を注ぐ。見たところ、透明な水だ。飲んでみる。

「……うん、何の味もしない。正常な水だ」

 ミーヤはようやく微笑んだ。調子が悪いと、出した水はなんだか変な味になるのだ。

「オレにもくれよ」

 マアチも魔法水筒の水を飲む。

「ああ、うまい。自分で飲み水が用意出来るのってやっぱいいよな。オレは水の魔法は初級止まりだから。ミーヤ、すごいぜ」

「マアチは火の魔法が得意じゃない。それに、父さんはもっとすごいよ。もっと大きなタンクを満タンにするんだから」

 ミーヤの父は、村の家を定期的に回り、上水タンクを満たしていく。

「タンクは、こんなコーティングじゃなく、工場でしっかり作ってるんだよな」

「うん、『残水の魔法』が剥がれちゃ困るからね。工場で精霊が力を込めまくって、タンク自体を『残水の魔法』で固めるように作るんだって。だから値段も水筒の比じゃないって。……だから水屋も、それに見合った力量がないと駄目だって父さんは言ってた」

 ミーヤはコップの水を飲み、続ける。

「私も時々、父さんの仕事について行って、畑の水やり用のタンクに水を入れたりはするの。それなら雨水レベルの水でもいいし。でも自分の魔法で、他の人のための水を、タンクにたくさん残していくっていうのは、緊張するんだよね。あんまり汚い水は出したくないしさ。飲み水用のタンクに水を入れるのはまだ無理。

 父さんは、飲み水用の水を大量に出せるんだからすごいよ。……家に帰るとお酒ばかり飲んでるけど」

「仕事で魔法を使うのって疲れるんだろうな。

 ……オレ達の仕事は、魔物狩りだ。明日から頑張ろうな!」

「うん!」

 ミーヤとマアチは笑顔でうなずき、水を飲み干した。


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