第二章 06 また洗濯
06 また洗濯
洗濯場には誰もいなかったが、洗濯物は干してあった。
町には『洗濯屋』もある。有料で服を洗ってくれる施設だ。だが、宿屋にこうして洗濯をする設備があるので、ミーヤ達は自分で洗濯をしている。他の客も、雨の日で暇なのか、外着を何枚も洗濯していた。
木桶と洗濯板を借り、二人は衣類を洗う。
「どうせズボン洗うなら、上着もセットで洗おうかとも思うけど、まだ生理中でだるいし、明日は魔物狩りに行くもんね」
「洗った直後に泥まみれになったら嫌だもんな。寝間着も、生理が終わったら洗おうと思ってんだけどよー。タイミングがな」
「マアチも寝間着は一枚しか持ってこなかった? だってリュックに入んないもんね」
「そう、生理用品が邪魔すぎんだよ! ナプキンと洗剤と防水布と防水袋と、どんだけかさばるんだよって! これがなきゃ、寝間着と外着、二枚ずつ持ってこれたのにさ」
「外着は、今着る分と着替えとで、二枚は無いと不安だもんね。減らすんだったら寝間着だよね。でも寝間着だって、ほんとは洗い替えを入れときたかったよね」
「寝間着一枚だと、朝洗わねーと夜着れねーもんな。もう一枚ありゃあ好きなタイミングで洗えるのに。
……ナプキンってさ、『この薄さでこの吸収力!』みたいな広告が店に貼ってあったりするけど、出血が多いときはやっぱり分厚くないと駄目なんだよな」
「そうそう、薄いと隙間から漏れたりね、さっきの私みたいに。そういうの買っても結局自分でもう一枚布を縫い付けたりしてさー」
生理用品は、女性用の衣類や雑貨を扱う店で売っている。自分で布を縫って作ることもできる。
「『肌触りのいい布でできてるから、生理中でも快適に過ごせます!』みたいなのも売ってるけど、出血してる時点で超絶にマイナスなんだから、どんな布使ったってマイナスなんだよな」
「そうそう、生理来てる時点でマイナスが100とか1000とかだもん、肌触りの良さなんてプラス1程度だし、快適どころか0にすらならないよ」
「わかるぜー」
初級学校で算数を習ったので、数値で不快感を表現できるようになった。具体的な数字があると、自分の感覚を他人に伝えるのに便利だ。
愚痴を言い合いながら二人は洗濯を終えた。
「雨も止んだし、早く乾くといいよな」
干した洗濯物を見ながらマアチが言った。
「喉渇いちゃったな。洗面所で水を……あっそうだ、そろそろ魔法で出せるかな」
ミーヤが気づく。
魔法には精神集中が不可欠だ。生理が来ると気分が最悪なので魔法を使う気にもなれないが、昨日よりミーヤの体調は楽になってきている。
「生理中で気分がマイナスとは言え、精神集中は出来そうな程度のマイナスか?」
「うん、マイナス30か……洗濯がなければマイナス20ぐらいだったかも。魔法水筒でやってみよう」
二人は笑い合い、部屋に戻った。




