第一章 17 風呂上がり(その1)
17 風呂上がり(その1)
風呂桶と椅子はもう使わないので、湯で流してから置き場に片付ける。
辺りを血で汚していないか確認しながらもう一度湯船に入り、体を暖める。湯船を出て、辺りを血で汚さないよう急いで脱衣所に向かう。
ミーヤは急いでロッカーを開け、ナプキンを体に挟む。これで出血が来ても一応は安心だ。
マアチも後に続いて同じようにする。終わりがけとは言え、油断は禁物だ。
だがナプキンは不安定な状態なので、二人は手早く体の水を拭き、ショーツを着ける。これでナプキンが固定されるので、落ち着いて着替えが出来る。
「風呂、もっかい確認してくるわ」
マアチが風呂の扉を開け、血をこぼしていないか見に行く。湯船から脱衣所に移動する際に確認はしたが、見落としがあるかもしれない。他に客がいる場合はショーツを着けて脱衣所から戻ってくるわけにはいかないが、今は自分達だけなので問題ない。
「大丈夫だったぜ」
「ありがとう」
二人は微笑み合う。風呂でもリラックスどころか緊張し通しだが、体はさっぱりした。持参した保湿剤を顔や髪に塗り、着替えを済ませる。
「じゃ、洗濯行くか」
『使用済み』のかごに手ぬぐいと体ぬぐいを入れながらマアチが言う。下着とナプキンを洗うのだ。
「うん」
ミーヤも荷物を片付け、二人で洗濯場に向かう。
洗濯場はボイラーの熱風が通っているので、洗濯のついでに濡れた髪を乾かすことができるのだ。
洗濯場にもまだ誰もいなかった。二人は木桶と洗濯板を借り、下着を洗う。ナプキンには離血浄の洗剤を掛ける。身につけていたのはトイレから風呂に移動する間だけなので、血の付着は少ない。血を剥がしたら下着と共に洗えば終わりだ。
「生理じゃなかったら洗濯もこれで終わりだけど、私はまだ寝る前に何枚もナプキンを洗わないとな……」
ミーヤがぼやく。昼寝の後、ナプキンを洗って干した。それはまだこの洗濯場で揺れている。食事と風呂の間にもう乾いたようだ。
風呂前に取り替えて防水袋に入れたナプキンや、今付けているナプキン、これから寝るまでの間に取り替えるナプキンは、寝る前に洗わないといけない。
「オレは終わりがけだから、洗うのは明日に回しても大した枚数じゃないけど、今日のうちに洗っといた方が気分がいいもんな。ほんっと、生理ってめんどくせー」
マアチも洗濯物を干しながらうなずく。
洗濯物を干し終えた二人は、熱風の当たるところに移動して髪を乾かした。生理の愚痴を言い合いながらしばらく過ごし、やがて荷物と、夕方干したナプキンを回収して部屋に戻った。




