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沼ハマの入り口  作者: 夏目 碧央


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元カレ

 何となく、聞いたことがある名前だと思っていた。「潮」という苗字。珍しい名前ではあるが、芸能人にでもいたかもしれない、くらいに思っていた。だが、ふと思い出したのだ。

 細かい部署は違うのだが、同じフロアで働いていた女性がいた。小柄で華奢な美人で、いつの間にかいなくなったのを、ふと思い出した。彼女の苗字は潮さんだった。

 潮さんには噂があった。課長と不倫しているという噂だ。それほど大っぴらに広まっている噂ではなかったが、女子社員が話しているのをうっかり聞いてしまったので知っていた。しかも、その相手の課長というのが、俺の元カレだったからよく覚えていた。

 単なる噂で、真実ではないかもしれない。だが、あの課長には前科がある。不倫の前科が。何しろ、俺とも不倫していたのだから。もう何年も前の話だが。

 新入社員の頃、仕事でミスをして落ち込んでいた時、隣の部署の係長だった彼が、飲みに誘ってくれた。まさか、そのままホテルへ連れて行かれるとは思っていなかったのだが。若い頃は飲み方もよく分からず、へべれけになって肩に担がれ、そのまま連れて行かれたのだ。ただベッドに寝るだけかと思って、服を脱いでベッドに寝たら、そのまま……。彼もバイだった。奥さんがいたのだが、たまに男の子ともそういう事をしたくなるそうだ。それで、時々会うようになった。

 彼は優しかった。少なくとも、そう見えていた。だが、男同士だろうが何だろうが、不倫はやっぱり不倫。愛人の方はみじめだ。休日に約束をしても、家族の用事が出来ればそちらが優先。会っている時に偶然奥さんとお子さんに出くわした時には、仕事だと嘘をついた。男同士の恋人だと、友達のフリをしてはぐらかす事は日常茶飯事だが、仕事ではないのに仕事だと嘘をつく筋合いはない。嘘をつくのは気持ちの良いものではないし、それは彼と奥さんの為であって自分の為ではないから、やっぱりみじめだ。

 そんなこんなで、2年ほどで別れた。別れても、普通に仕事仲間として飲もうと言われ、一度誘いに乗ってみたら、やっぱりずるずると同じ事になると分かった。だからもう、仕事帰りに飲みに行く事も絶対にしない。

 その彼の名は、柴田しばた 樹生みきお

「なあ朝陽、里奈の父親の事は、どのくらい知ってるんだ?」

「え、それは……何も知らない。姉ちゃんが何も言わなかった。」

「じゃあ、養育費とか、もらってなかったのか?」

「うん。里奈に父親はいない、の一点張りでさ。俺も親も養育費の事は言ったんだけど。」

「そうか。じゃあ、お姉さんが亡くなった事も、もしかしたら知らない可能性があるのか。朝陽、もし俺が里奈の父親を知っているって言ったら、どうする?」

「えっ?」


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