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八十七話 恋 二

 初めはね、傭兵の国って聞いて商売がしやすそうだなってくらいの気持ちだった。でも一度住んでみれば自分でも驚くくらいに水が合ったの。私と同じような、その日を生き延びて楽しくやれれば良いって人種がたくさん居たからかも。


 ……カイナと初めて会ったのは、そんなムラクにすっかり定着しきった後の話だった。


 最近ここに来て傭兵になった新参者。古参も真っ青な腕っぷしみたいで、色んな意味で注目されてるって。


 最初に会った時の感想は、ふーんって感じだった。


 確かに身体はガッシリしてるし、一つや二つ修羅場を経験してそうな雰囲気もある。ただ、顔つきがまだ幼い。それに口数は見るからに少なそうで、協調性は無さそうだった。


 単刀直入に言って、タイプではない。だけどこれから有力な傭兵としてここに定着するのであれば、関わりを持っておきたい。そんないかにも打算的な思いで話しかけた。


『何か用か』


『アナタに興味があってね。期待の新人、何でしょう?』


 アナタに興味がある。大半の男はこれで釣れる。それだけでは釣れなかったとしても、少し会話を重ねればすぐに相手の懐に入れる。


 それまでの人生で自然と培った、ギフトとは関係の無い経験則から来る技能のようなモノ。


 ただ、カイナは手強かった。


『そうか、俺はお前に興味が無い。帰れ』


 取り付く島も無い答えだった。それほど冷たくされたのは初めてだったからか、珍しく私は意地になったみたい。


 何度か同じように話しかけたり、逆に話しかけない期間を作ったり、無理矢理スキンシップを取って、やっと態度が少し軟化し始めた。開口一番に帰れと言われなくなった辺りで、私は初めて彼にギフトを使った。


【透心】は前提として構築されてる人間関係が強固な程、良く視えるようになる。


 会話とスキンシップである程度心を開かせて、ギフトで更に相手の人間性を掴む。私の中で手順化された、人との関わり方。


 ――彼の心は、一言では形容し難い内容だった。


 普通なら今どういう気分なのか、何がしたいのか、くらいは簡単に読み取れる。カイナの場合はそれすらも難しい。


 全体にモヤがかかったような、少し見えたと思えばすぐに見えなくなるような、そんな曖昧で定まらない心。


 芯が無い。もしくは失ってしまっている。そんな風に見えて。


 時折、幼い女の顔が映った。


 ……初めて見る心の様相。多分、私はそれに惹かれたのだと思う。


 何度話しても、何度触れ合っても、それは変わらない。小さな感情の揺れ動きこそあれど、心の大半はいつも煙に包まれている。


 知りたい。最初はそういう、ちょっとした好奇心が始まり。

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