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八十四話 街道

「旦那、乗り心地はどうですか?」


 身体に伝わり続ける不規則な揺れ。俺はそれに対する感想を包み隠さず伝える。


「積まれた荷物の気持ちが良く分かるな」


「はは、勘弁してくださいよ。御者台に無理矢理二人で座るよかマシってもんでしょう」


 何処となく呑気な中年の男。実際、この世情で商売人もどきをやりながら各地を巡る旅をしているというのだから呑気なんだろう。


「何にせよ俺としちゃ幸運でしたよ。傭兵があらかた出張ってるってんで途方にくれてた時に、旦那みたいなお強い人がそっちから話を持ちかけてくれたんですから」


「俺も足が欲しかった。都合が良かったのは俺もだ」


「にしても、本当に報酬は無しで良いんですかい?」


「最後まで護衛するって訳でもない中途半端な同行だ。要らん」


「欲の無い人ですねえ。傭兵ってのはもっと金にうるさくて神経質な人しか居ないと思ってましたよ」


「……間違いないな。金に無頓着なヤツはそう居ない」


「でしょう?」


 我ながら白々しい。だが不思議と、この男から報酬をせびろうという気はしなかった。


 それに、そもそもこれはギルドを通した依頼じゃない。俺とこの男の個人的な利害の一致。


 俺は今、傭兵として動いていない。何の依頼も受けていない。


「そういや旦那、王都に行きたいって話でしたが……目的はあそこでやるっていう儀式ですかい?」


「そんな感じだ」


「ならちょっと遅かったかもしれないですよ。なんたってやるのは今日の昼らしいですからね。このまま行けば王都の前に着くのは良くて昼頃です。間に合うかどうか……」


「それで良い。後から報酬を要求したりはしないから安心しろ。王都の前までは確実に護衛してやる」


「旦那がそれで良いってんならこれ以上は何も言いませんが。こっちにとって都合が良すぎる話ってのはどうしても引っかかるもんで」


「最近、同じ事を言ってた傭兵がいたな」


「でしょう?まあ、考えすぎでせっかくのチャンスを逃すのも馬鹿馬鹿しい話です。俺はあまり悩まず、気楽に生きてますがね。……そういや、魔物と会いませんね。旦那が居るお陰かな」


 揺れと、それに伴って馬車が放つ音。少し見身を乗り出せば見えるどこまでも伸びていく街道は、途中で何度か各方面へと分岐している。


「それにしても、天気の良い日だ」


 晴天の中、進むべき道は一つしかなかった。

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