五十二話 残火 前
ギフト持ちは特別だ。そして授かった人間は大抵神に感謝する。それはいつだって変わらない。だが私の場合は、恨みを抱かざるを得なかった。
【不老】。三つ授かった内の一つがそれだ。その名の通り【不老】はそれを授かった時点で常に効力を発揮し、保持者の老いを止める。
羨ましい、と思うか?思わないだろうな。基本ギフトを授かるのは子供の時分、つまり【不老】の保持者は決まって子供の姿のまま固定されるワケだ。
同世代の人間達が日々成長していく仲、私だけはこの未熟な状態のまま。思考能力は成長したのが救いだが、見た目が変わらないというのはやはり消えない悩みの種だ。
親身に接してくれた人間が周囲に居たとはいえ、当時は相当に苦しんだ記憶がある。
――そして、悩みの種はそれだけじゃなかった。なってしまったんだよ。そんな私が勇者に。
何の冗談かと思った。確かに私は三つのギフトを持っている。だがその内の一つは戦いには役に立たないどころか、身体能力の成長を阻害するモノだ。そんな人間が戦いに、ましてや魔王討伐になんて向いてる筈がない。
だが、だからといって投げ出すのは無理だった。魔王を完全に倒すのに必要な【浄化】は勇者だけが持っている以上は、私は討伐に必須の存在だ。話を聞きつけた王都からの迎えの者に対して、素直に受け入れるしかなかった。
……ああ、私が【交信】の作用を体感したというのはここじゃない。もちろんこの時点で私は【交信】の影響下にあったのだろうが、私がそれを確信したのはその後の話だ。
――話を戻そう。私が子供の姿のままだというのは王国も問題視していた。残る二つは戦闘系のギフトだが、やはり運動能力には問題がある。歴代の勇者と比べれば頼りない存在なのは確かだった。
だからこそ王国は私の周りを、いわゆる勇者一行を極限まで手厚くすることに決めた。
知ってるだろう?魔王が居する場所は【浄化】を持つ勇者以外は足を踏み入れるのすら困難だと。だからこそ魔王討伐は勇者を含めた少数精鋭で行われる。その困難を乗り越えられる人材は必然的に少数になるが故、だな。
私の場合は勇者一行足り得る人材が六人居た。これは当時で言えば歴代で最多の人数らしかった。見た目は完全な子供である私を守らなければならない、なんて意識が働いたからかもな。
結果的に彼ら精鋭六人、そして私は実際に魔王討伐を成し遂げた。だが全てが上手くいったワケではなかった。
精鋭の内一人が、戦いの中で命を落とした。




