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五十一話 自分語り

「私自身、【交信】を保持していた経験があるんだよ。だからこれは私の体感も含んだ話だ」


「……では、貴女が元勇者であるという証拠は」


「これと見て分かるようなモノは無いな。【浄化】か【交信】を使って見せるのが手っ取り早いんだろうが、この二つは魔王討伐を終えれば使えなくなる。そしてそれ以外はどう足掻いても決定的な証拠にはならないだろう。何年前の話なのか、私ですら分からんからな。……信じられない、というのなら好きにしろ。私は私の見解を話しているに過ぎない。聞くに値しないと思うのであれば帰ればいい」


 再びアスリヤは閉口する。賢者の言うことがどこまで本当なのか、信用できるのかは分からない。だがアスリヤにとっては真実を探る為に頼れる相手は賢者しか居ない。


 となれば感情を抑え、もう黙って話を聞く以外には無いとアスリヤの理性は理解しているようだった。


「――信じる、とは言えません。でも貴女の話を否定しきれる材料もこちらにはありません。なので話半分で聞かせて貰います」


「構わない。考えを整理するついでだ。お前達に全てを信じて貰えるとは思っていないし、貰いたいとも思っていない」


「分かりました。……あの、先程は取り乱してしまって――あ」


 賢者の話に対し、さっきまでアスリヤは興奮からか立ち上がっていた。そして今、それが維持出来なくなったという風に膝を突く。


「お前、自分が体調不良で倒れたってのを忘れてるだろ。話は聞きながらでも良いから寝てろ」


「……すいません」


「体調不良?ああ、アレか。それなら」


 床に寝そべろうとするアスリヤに対し、賢者は接近し手を伸ばした。害意が無いのを悟ったのかアスリヤは疑問を浮かべながらも抵抗しない。


 賢者の手は淡い光を発しながらアスリヤの額に触れた後、少しして離れていった。


「これで多少は楽になるだろう。その男の言う通り大人しくしてるんだな」


「……ギフトか?」


「似たようなモノだ。永く生きてると出来ることが増えるんだよ。望まずとも。……そこの寝てるヤツは大丈夫か?」


 賢者が示したのは完全に寝入っているニタ。反応が無さすぎて途中から存在を忘れていた。


「一応、頼む」


「分かった。お前は元気そうだな」


 同じような処置をニタにもした後、賢者は再び元の位置に戻る。


「さて、お前達の求め通り疑問に対する見解は答えた。まだ何か聞きたいことがあるか?」


「……お前は【交信】を体感した上でその答えを出した。ということはお前自身、【交信】にその思考誘導とやらの効果があることを、実感するような出来事があった筈だ。聞くとすればこれだろ」


 言いながらアスリヤに見れば小さく首肯していた。確認を終え視線を戻すと、賢者は意味深に沈黙していた。


「どうした?」


「……話すのは構わない。が、そう面白い話ではない。――私が今の今まで生き続けてきた理由にも関わる、ただの自分語りだからな」

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