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四十四話 夢想 後


 出自が違う、瞳の色が違う、髪の色が違う、肌の色が違う。そんな私と皆の違いを、きっと誰よりも私が意識している。輪の中の私だけが違う。


 分かっている。私が必要以上に違いを感じているだけだ。皆はただただ私を真っ直ぐに見ている。外見の差異も、捨て子という出自も、色眼鏡にかけずに。


 だけど……いや、だからこそ、どこまでも思ってしまう。私はこの村の異物なのではないか、と。


 もう、皆と具体的に何が違うのかは、最早関係なかった。理由も無くただ漠然とそう感じるようになった。


 ――村で一番仲が良かった女の子が居た。


 ――よく、私に面白いモノがある、と言って色んなモノを見せてくれようとしてくれた男の子が居た。


 ――私が何かに悩んでいるのに気づいたのか、声をかけてくれたお爺さんが居た。


 皆が優しい。そこに壁なんてある筈が無い。あるとすれば、私が勝手に感じているだけ。


 家族に遠慮し、友人から一歩を引き、特定の誰かと深い仲になることは無い。そんな私の様子に、皆は何を思っていたのだろうか。


 ――十歳の時、私は二つのギフトを授かった。ここでも私は恵まれていた。


 特に【顕快】は村の皆が喜んでくれたギフトだった。他者の傷を治すという分かりやすく結果が見える善行。人として目指すべき在り方。私はそこに価値を見出した。


 同時期、その時点で復活していた魔王の影響が村にも届き始めていた。長らく平穏だった村に少しづつ影が差し、皆の顔色から不安が滲み出す光景を見て、私は決めた。


 体力を付け、運動能力を鍛え、二つのギフトを磨く。幼いなりにやれることをやった。


 ある時、村に近づいてきた小さな魔物に対して、私は村の大人の制止を振り切って対峙し、ギフトを使う事で追い払った。


 事が終わった後、私は皆に危ない、心配だったと叱られた。でもその後には感謝の言葉が続いた。村の役に立てて、心が少し満たされたような気がした。


 そんな風に時折魔物を相手にしていると、どこから聞きつけたのか王都から来たという兵士が村にやって来た。兵士の目的は私で、来たる脅威の為に優秀なギフト持ちを求めていた。


 始め、私をそれを断る気だった。王都に行けば村を守れなくなる。それは私の目指す先ではないと。


 だけど大きな視点で見れば、エルシャ全体を守る事は村を守る事に繋がる。それにこのまま、この村だけを守り続けるとして、私一人でどこまで出来る?付け焼き刃の知識や動きで、どこまで?


 そんな風に悩む私の背中を押してくれたのは、村の皆だった。皆は私が人の役に立ちたがっているのに気づいていたようだった。


 ――そして、私は王都で兵士になると決めた。村の皆を、この国を、世界を守る為に。




 ☆




 だってそうすれば。誰からも褒められるような善行を重ねれば。誰からも尊敬されるような人間になれば。そうすればきっと。


 私は私を……皆と違う私を、いつか肯定出来るようになる筈だから。

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