三十九話 消耗
「二人共、問題ないな」
一連の戦闘が終わり、集合した俺達は互いの無事を確認する。今ので傷を負ったヤツはいない。
いたとしてもアスリヤのギフトで対処できるが、負わないに越したことはない。
「死ぬかと思ったけど大丈夫っス」
「私も問題ありません」
「なら良い、探索を再開するぞ」
そうしてその場から歩き出して間もなく、足音が一つ減った。立ち止まり振り返ればアスリヤが膝をついている。
「あれ……?」
「どうした」
「……疲労感があります」
「さっきの戦闘でか?確かにギフトは何度か使っていたが、あの程度でへばるヤツじゃないだろうお前は」
先の依頼では魔物の大群を相手に大規模かつ連続で使いつつも、致命的な疲労を見せなかった。
ただ我慢していただけというのもコイツの性格的にありそうだが、それにしても不自然だ。
「私自身もそう思います。ですが、何というか、ギフトを使う際の体力の消費が多い気が……」
「それ、アタシも感じるかもっス」
「この環境下での探索だ。ただ歩くだけでも体力の消費が激しいのは当然としてある。だが……この場所自体に何かがあるのか」
俺自身も覚えが無いワケじゃない。ここには入る際、それを躊躇う抵抗感のようなモノがあった。勘や危機意識が働く感覚。どう考えても危険な場所である分、それが働くのは自然だと思い特に気にしていなかったが、そもそもが謎の場所だ。俺達に直接影響を及ぼすような何かがあったとしてもおかしくはない。
「――どうする、依頼人。今ならまだ容易に引き返せるぞ」
舐めていたつもりは無かったが、やはりここは未知で危険な場所だ。そしてこの依頼の判断をすべきはアスリヤ自身。だからこそ早々にしたその問いに、アスリヤは立ち上がることで答えた。
「続行です。疲労は感じますが、まだまだ動けないというほどではありません。行きましょう」
「了解っス」
「……分かった。だが体力の消費が想定よりも多いのは危険視すべき要素だ。動けなくなる前、限界が来る前にそれを自己申告しろ。どちらか片方なら俺が背負うか担ぐかして運べる」
「あの、それだとカイナさんの負担が……カイナさんだって疲れてる筈です」
「俺はまだまだ平気だ。荷物が増えても何とかなる」
「ひええ、流石の体力オバケっス。やっぱり常時使用の身体能力強化ギフトってとんでもないんスねえ。心強いっス」
「……分かりました、言います」
「遠慮はするなよ。かえって面倒だ」
「善処します」
「アタシは遠慮なく言えるっスよ!カイナくんに身も心も預けて運んで貰うっス!」
「お前は引きずることにする。さあ、さっさと行くぞ」




