三十七話 雑談
「ニタ、ギフトを使え」
「はいっス。……ダメっスね。反応はあるけど多分木っス」
「分かった。またギフトが使えるようになったら言えよ。アスリヤ、ついてきてるか」
「問題ありません」
俺、ニタ、アスリヤの並びで、俺達は入り乱れる白の世界を突き進んでいく。既に出発から一時間は経とうとしていたが、未だにめぼしい発見は無い。
降雪も出発時より勢いを増している。最低限、視界の確保のために露出している目元からは十分に寒さが伝わってくる。そしてどこまでいっても大した変化のない景色。
人間が長居出来るような場所ではないと、俺達は早々に身を以て体感していた。
「……あの、二人に聞きたいことがあるのですが」
「必要な話か?」
「いえ、雑談のようなものです。気を紛らわせたいので……」
「アタシは良いっスよ。というか同じようなこと考えてたっス」
「……無駄な体力消費にならない程度にしろよ」
「はい。お互いに慣れ親しんだ感じがするのですが、二人は知り合いなんですか?」
「同じ依頼を何度か受けただけだ。知り合いといえば知り合いだな」
「アタシ、いっつもキツイ依頼ばっかり受けてる上に弱いから、腕利きで荒事担当のカイナくんと一緒なことが多いんスよねえ。カイナくんが居るといつもより安心出来るから、アタシとしてはありがたい話っス」
「その割には随分と気安い感じですが……」
「傭兵はみんなこんなもんスよ?立場とか年齢を気にする人が少ない分、最初は堅苦しさがあってもすぐ無くなるっス。そんなことに気を取られてたら死んじゃうからってのもあるんスけどね」
「なるほど……ちなみになんですが、ニタさんは何歳なんですか?」
「んー、二十くらいなんじゃないっスかねえ。正確には数えてないっス。まあ、気にすることないっスよ。だからアスリヤちゃんが私より年下だとしても、そこまで丁寧な口調じゃなくていいっスよ」
「私は今年で十七になります。といっても私は誰に対してもこんな感じなので、ニタさんこそお気になさらず」
「それはそれで凄いっスねえ。アタシらと一緒で生き方に染みついてる感じっス」
「……それとあの、カイナさんは何歳なのでしょうか」
「知らん、数えてない。というかお前ら喋りすぎだろ。体力無駄に使うなって話、聞いてたか?」
「雑談だからこんなもんスよ。それにちゃんと気の紛らわせにはなってるっス。ここ、ボーっとしてるとヤバそうで……あ、ギフト使えるようになったっス」
「使え」
「はいっス。まあさっきと同じで何も……いや、動いてる――魔物っス!」
確実に伝達する為の声量でニタが叫ぶ。その瞬間、俺達はニタを中心に囲みその場に構えた。
「アスリヤ、分かってるな」
「はい。ニタさんを死守します」
「そいつは戦闘に関しては基本期待出来ない。それなりに動けはする子供とでも思え。それと、普段とは環境も違う。いつも通りに戦えると思うな」
「はい!」
「それなりに動けはする子供でゴメンなさいっス!」




