二十一話 遭遇
人探し。基本、そのテの依頼はそれに適したギフトや技能を持つヤツが受けるか回されるのが常だ。極まってるのだと、情報さえあれば即座に居場所を特定できるギフトを持ってるヤツなんかもいるらしい。
もちろん俺にそんなギフトは無い。だが、やりようはある。
「死んだのは夜中頃。俺と別れた後、か」
入るのに許可が必要な一帯にあるギルドの一室。そこにイバラの死体は置かれていた。髭の男の手引きでここまで来たが他に誰も居ないようだった。
一瞬、アスリヤの姿を思い浮かべたがすぐに振り払う。アイツが何をしているのかは知らないが、今は関係が無い。さっさと仕事を終わらせる。
──俺のギフトの一つ、【剛体】は常時身体能力を強化する。そしてそれは膂力や脚力に限った話じゃない。
普段は邪魔になるのが理由で意識的に制御しているが、視覚や聴覚のような感覚も強化される。
俺は死体の元に接近し、抑えていた感覚の一つを解放しそのニオイを嗅ぐ。まだ腐乱臭は無い。鉄臭さ、そしてイバラ本人のモノだろう残香がほとんどのその中に一つ、引っかかる情報があった。
微かな刺激臭と取り繕ったような香油らしき匂い。刺激臭は日頃から路地裏でゴミ漁りをしてるような不清潔なヤツが放つモノ。香油の方も特徴的な匂いだ。
刺激臭、香油、そして件の怪しい人物からするだろう血の臭い。ひとまずここら辺を基に鼻を使って捜索する。
髭の男の注文上、俺は聞き取りのような露骨な情報収集が出来ない。秘密裏に、単独で。生かして犯人を捕まえる。
必要な事を終え、俺はその場を立ち去ろうとする。最後に何となく振り返ったが、部屋はどこまでも静かだった。
☆
ムラクの中心であるこの都市の広さはそこまででもない。朝方に件の人物の目撃情報があり、事件発生後の都市の出入りに制限をかけているという話を信じるなら、そいつはこの都市の中に居る可能性が高い。
そうとなれば後はしらみつぶしに探していくだけだ。手掛かりになる三種類のニオイ、もしくはそれに近いニオイがなるべく重なる場所、対象を追い、同時に住人の噂話にも耳を傾ける。
──幾つかハズレを引いた後、ついに三種類全てが重なったニオイを嗅ぎ取った。小道、路地、露店の周辺。所々に痕跡を見つけつつ、徐々にニオイの先へと近づいていく。
最終的に辿り着いた先は、以外にも都市の中心に近い場所だった。
昼すぎにも関わらず薄暗く陰気の雰囲気が付きまとう、建物が密集する区域の細い路地を足音を殺し進む。
「!」
その時、足音がした。
俺が辿って来た道を通り、まさにこの場所へと近づこうとする音。振り返り、曲がり角の前で構える。
──この時間にこんな場所を好んで歩くヤツは早々居ない。俺を追って来た誰かか、それとも目撃情報は関係が無くコイツが犯人なのか。
様々な考えを巡らせていると、身体と意識を向けた影響で嗅覚が謎の人物を捉えた。
……女。いや、これは。
記憶の中にある情報がそれと結びつくのと、答えが目の前に現れるのは同じタイミングだった。
「──カイナ、さん?」
曲がり角の先から現れたのは、勇者一行の一人であり最近の俺の悩みの種であるアスリヤだった。




