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『ソヴァ皇太子殿下、心のこもったお便りありがとうございました。
殿下の癖のある文字を指でなぞって、うっかり涙ぐんでしまいました。心にぽっかりと空いた穴に、涙が滝のように流れ込んで息ができません。
ウドゥン王子は元気です。ソヴァ殿下のように世継ぎの責任を負っておりませんから気楽なのでしょう。農夫のように鋤や鍬等の農具を担いで、泥だらけになってもまったく気にしていないようすです。私が目を覚ますころにはもう畑で汗をかいているんですって。
誤解なさらないでくださいね、殿下。私の起床時間が遅いわけではないんです。女官をしていたときよりは遅いのは事実ですが。それには理由があるのです。使用人より早く起きないでくださいって、私付きの侍女から頼まれたからなんです。
使用人は主人より早く起きて、支度しないといけませんから、私が早く起きたら、彼女たちは眠る時間がなくなっちゃうんですって。だから私、ベッドの中で寝たふりをして侍女が起こしに来るのを待ってるんですよ。面白いでしょう。
もしやソヴァ殿下も同じことをされていたのかしら。いかがですか。想像するだけで楽しくなってきてしまいます。
日がな一日、ずっと貴方のことを考えています。私が溺れる前に殿下にお会いしたいです。貴方のソーキより』