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『ソヴァ皇太子殿下、お元気でいらっしゃいますか。
なんて、ちょっとおかしいですね。
結婚式でお見かけしたばかりなのですから。
ウドゥン王子と私が結婚式をあげるなんて、三日三晩経った今でも嘘のようです。生まれて初めて、裾をひきずるドレスを身に着けました。人生で最高の瞬間として死ぬまで忘れないことでしょう。
ウドゥン王子はソヴァ殿下の異母弟とはいえ、数多いる王子の一人にすぎないとたかをくくっておりましたから、まさか国家行事の結婚式になるなんて思ってもみませんでした。
国王陛下、大臣様方、各国のお偉い方たちにご挨拶するのはとても緊張しました。パレードで民衆に笑顔を振りまくのはもっと緊張しました。だって、みんながみんな、私たちに惜しげもなくお祝いの言葉を捧げてくるのですもの。まるで私が幸福の象徴のように見上げてくるのですもの。どう応えたらいいのかわからず頬が硬直しました。
戸惑っていたら、ウドゥン王子が脇腹をくすぐったんですよ。びっくりしてしまいました。結果的には緊張がほぐれて自然に笑えるようになりましたが、ちょっとデリカシーがありませんわ。そうお思いになりませんか、ソヴァ殿下。
女官部屋の狭い部屋に住んでいた私が、今では豪奢なお屋敷の女主人だなんて。
変化がめまぐるしくて、ソヴァ殿下と語らった日々が何年も過去のことのように思えてしまいます。
ソヴァ殿下、お寂しい思いはしておりませんか。
私は殿下のお世話ができなくなって、とても寂しいです。
思いの丈をすべて記していては便箋が幾枚あっても足りなくなってしまいますね。
殿下に頼まれたとおりに、定期的にこちらの暮らしぶりを報告させていただきますね。貴方のしもべ ソーキより』