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七彩の国  作者: 葉月 檸檬
-翠緑の森-
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能力測定

冒険者ギルドに入った私たちは受付へと向かった。


「サニーさんこんにちは」


サニーと呼ばれた女性は書類に向けていた顔を上げてニールの顔を見ると、途端に笑顔になった。


「あらニールさん。気づかなくってごめんなさい。クエストの報告にいらしたのかしら?」


「はい、こちらが狩猟したワイルドボアーの狩猟証拠です。」


そしてニールは何もない場所へ手を突っ込み獣の首をサニーに渡した。


「まぁ!今回のは結構大型でしたのね。無事で何よりです。報酬の準備をしますのでおかけになってお待ちいただけますか?」


そう言うとサニーさんはカウンターの裏側に行ってしまった。


「ダイアナさんはワイルドボアーの首を見るのは初めてかい?」


「初めてです。えっと、ちょっとびっくりしちゃいました。あはは…」


(初めてに決まってるじゃない!というか獣の生首なんて見たことないわよ!)


正直びっくりしたどころではない。何せ空中から生首を引っ張り出してきたのだから。


「狩猟メインの冒険者になるならこれは慣れないとだね。まあ、採集や弱い魔物の狩猟なら首を持ち帰る必要もないんだけど。」


「採集は分かるんですけど、弱い魔物の首はいらないのはどうしてでしょうか?」


「あぁ、単純に弱い魔物は一体単位でのクエストは出なくてね。首を一々持って帰っては嵩張るだろう?だから、魔石をその数分持って帰れば証拠になるのさ。あ、元々持っている魔石は出せないからね。魔石鑑定器でいつ狩られたのか分かっちゃうから。」


「なるほど。……ニールさん、報酬を受け取った後お時間があれば私に冒険者の事やこの地域の事教えてもらえませんか?」


「あぁ、もちろん!サニーさんにも色々聞くといいよ。受付嬢は冒険者候補に色々教えるのも仕事だからさ。」


爽やかな笑顔でニールは答える。その笑顔は初夏の風のように爽やかで私には眩しく感じた。


「ニールさん、ご親切にありがとうございます。」


私は感謝を込めてお辞儀をする。


こんな誰かも知らない人を助けたばかりか親切にしてくれる。そんな人にはなかなか出会えないことは知っているのだ。

あの辛い日々に手を差し伸べてくれたのは1人しかいなかったのだから。


「そんな!頭を下げられるほどのことはしてないよ。こんな可愛いお嬢さんを放っていくなんてできないさ。」


「かっ、かわ!??」


そんな事元恋人にしか言われたことがないので驚いてしまった。お世辞だとしてもこんな爽やかな美男子に言われると動揺してしまう。


「あ!」


ニールさんが手を叩いて私の手を握る


「待ってる間暇だから能力測定しよう!それで冒険者になるかどうか決める人もいるんだよ。」


そう言い私の手を引き壁際まで歩いていく。


「え、ええ?能力って測れるんですか?」


「そりゃあね。俺には仕組みはわからないけど。魔道具師の専門知識が絡んでくるし。」


「な、なるほど」


魔道具師なる職業もあるのか。流石にこの年齢から学んで就ける職業ではなさそうだけど。


「よし!この魔法陣にに手をかざしてみて!すぐに測定されてこの隣の石板に反映されるから。」


赤色の魔法陣が浮かんだ銀の円盤の横に石板がある。石板には表が刻まれていて不意に昨日の業務を思い出してしまった。


(きっとあの仕事にはもう戻れない。思い出しても無駄よ。仕事が中途半端だったのは気になるけれど。)


ニールさんが期待に満ちた眼差しでこちらを見る。


「一応聞いておきますが、これ痛くないですよね?」


私からしたら異世界の見知らぬ魔道具だ。

魔道具というのも初めて見るし自分に使うのも初めてなのだ。正直少し怖かった。


「あぁ!そんなこと!大丈夫だよ。手をかざすだけで痛みも何も感じない。魔法陣がその手から能力を読み取るだけだから。」


「それを聞いて少し安心しました。初めて見るものなので怖くて…。」


「ははは!安心してくれてよかった。本当、ただ測定するだけだから!何も心配ないよ」


私はニールの言葉を聞いて微笑み魔力測定器に手をかざした。


すると魔法陣が光り私の掌を照らしていく。

石板の表に数字が上から順に刻まれていく。

この表知らない文字で書かれているが何故か読める。


魔法陣の光が収まるとニールさんが声をかけてきた。


「ほら、痛くなかっただろう?この能力値を見てどんな職業に就くか、あるいはどんな冒険者になるか決めるんだ。」


「便利な道具ですね!」


「そうだね。これを発明した魔道具師は天才魔道具師として歴史に名を残しているよ。」


「それで、私の能力はどんな職業に向いているのでしょうか。ニールさんはどう思いますか?」


私は石板が見やすいようにニールに場所を譲った。


「個人情報だから見るのも悪いかと思ったけど、いいのかい?それじゃあ、失礼させてもらうよ」


ニールさんは真剣な表情で私の能力が刻まれた石板を見た。


「一応サニーさんにも見てもらった方がいいのでしょうか」


ニールさんが目を見開き、次の瞬間こちらを見る。


「いや、待って…。この数字は、まさか…。」


「何かありました?」


「あー、とりあえずこれを紙に写しておこうか。ここに羽ペンと表があるから。」


そう言いニールさんは私に紙を差し出す。


「サニーさんが戻ってきたみたいだし俺は報酬を受け取りに行くよ。その間に書き写しておいて。それが終わったらもう一度手をかざしてくれる?そうしたら石板に刻まれた数字は消えるから。」


「はい、承知いたしました。」


私の言葉を聞くとニールさんは受付へ戻って行った。

ニールさんに言われた通りに表に数字を書き写していく。


(この世界の平均値がわからないからなんとも言えないけれど、光魔法が高い数値を出しているみたい。それに次いで器用度と素早さが高いかなぁ。他の人の能力値も見てみたい。)


私は書き終え、もう一度手をかざしてみた。

すると石板に刻まれた数字が見ているうちに消えていった。まるで時が遡ったかのように石が埋まっていくのを見て少しワクワクした。


書き写した紙を持ちニールさんの元へ行くと丁度報酬を受け取り終えたのかサニーさんはまた書類に目を落としていた。


「ダイアナさんお待たせ。それじゃあ家まで送り届けるよ」


「え?あの、先ほどのはなっ」


話してる途中で人差し指を唇に当てられる。

そしてウィンクして小声で「俺に合わせて」と伝えてきた。


「あ、あぁ、ニールさん!ご親切にありがとうございます。」


何が何だか分からないが言われた通り合わせることにした。この世界のルール等知らない私が突っ走るよりこの世界の住人に合わせた方がいいと思ったからだ。


「よし、では出発しようか。」


「はい。お願いしますね。」


私達は存在しない私の家に向かった。

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