4.そして私は正気に戻った
ナツミ君のことは一旦放置しておこう。
次の獲物、ハルキ君はめっちゃ頭の良いガリ勉くんだ。私と頭の作りが違う。
「どうしようアケミィ、私ハルキ君にどう突撃したら良いかわかんないや……」
伊達じゃないガチメガネかけてるし。メガネが本体って噂もある。ふっ飛ばしたらどうなるのかな。
「いや、クラウチングスタートで始めないと攻略ルート入れないとか、そんなこと無いからね??」
ラメが何か言ってる。無視無視!
「うーん、確かにねぇ。多分ドドメモで言う生徒会長と同じ攻略法が必要そうだなぁ」
げげ、アケミが不穏なこと言ってる。
「え……、それってもしかして勉強パラ上げないと駄目ってこと?」
アケミが見てるスマホの画面、私の勉強パラは50だ。バカすぎることは無いけど良くもない、と思ってる。
「やばい、テンション下がってきた。テンションだけが私の味方なのにいいいいいい!!」
「大丈夫だよカナちゃん!!」
わぁ! 何でか平手打ちされたぁ!!
「会うだけだったらドドメモでも簡単だったじゃん! この勉強パラを60まで上げたら経験上イベントが発生するよ!」
そこまで言って同じタイミングでラメを見た!
「そうだね。ぶっちゃけ前の2人もさ、既にカナちゃんのパラメーターが条件を満たしてたから会えたんだよね」
そりゃあ初耳だ。
「フラグ作るって言ってたもんね。おら、残り2人の出現条件教えろよ」
ああん? と顎をシャクってラメに睨みを利かす。
「まあ、それぐらいなら……。アケミちゃんの言うとおり、ハルキ君は勉強60、最後のナギト君は色気60だ」
お、おいろけぇ!?
「ナギト君ってドスケベだったんだ」
「やだー! カナちゃんは私が絶対護るぅ!」
アケミィ! って感極まって抱き締めちゃった。やっぱアケミさいこー!
「いや、その辺は安心して。これ全年齢対象だから。高校生の間で行き過ぎた交遊は出来ないように自然と規制がかかってる」
何かよくわかんないこと言ってる。
「あー、まあ、世界がそうさせないってことさ。水が金に変わらないのと一緒で、不変のルールがあるっていうか、越えられない壁っていうか」
「よくわかんなーい」
「わかんなーい」
この話聞いてるだけでまじ頭パンクする。責任取ってほしいわ。
「いや、うーん。そうか、ちょっと待ってね」
ラメはグルンと1回転したと思ったらイケメンに化けた! いや戻ったのか。
「ぷるぁ! 光の粒子が目に刺さるぅ!」
「ジェイ駄目だよ! ここ学校だよ!?」
言い忘れてたけどここ視聴覚室の中。ご飯食べ終わった後、人気のないここで作戦会議開いてたの。でもやっぱり誰かに見られそうで怖いよね??
「大丈夫大丈夫、僕もちゃんと周りには気を使ってるから」
金髪碧眼の極上のイケメンってこと忘れてたわ。ラメラメってずっと思ってた。天使なの忘れてたぁ。
「じゃあカナちゃん、ちょっと失礼するね」
やだ! 何このイケメン! 手にプラスドライバー持ってるぅ!!
「やだー! 殺されるー!!!」
「いや、ちょっと頭のネジ緩めるだけだから」
「不穏なこと言ってるー!!」
説明しろおるぁ! おるぁ! とその胸板を叩いてみた。タッチしてみたかったとか下心無いよ? ふひひ。
「引くわぁ」
そう言われると後頭部にブッスゥ!! ってドライバー刺された。アケミがそれを手鏡で見せつけてくれた。
「うわあああああああああ!!」
「カナちゃああああああん!!」
「はいはい、大丈夫だから」
何かグリグリされてる。ん? あれ? 気分は悪くない。むしろ――。
「ありー? もしかして頭良くなってる?」
「いや、そんな事はしてないさ。ただネジを緩めて知識の吸収効率を上げただけ」
何それ神じゃん。
「いいなー! 私もやってほしい!」
「ごめんねアケミちゃん、これはヒロイン限定の措置なんだ。ゲームのように攻略させようというのなら、ゲームのような効率さを授けてくださいって申請が通ってね」
その神さまめっちゃレスポンス早くね? 優秀すぎぃ。
「はい、じゃあこの状態で次の授業受けてみて」
ジェイは空中で前転するとラメに戻った。うんうん、やっぱジェイはラメだよね。よっしゃー! 勉強パラ上げてやるー!!
「なんて言うとでも思ったか?」
「はい?」
ラメが空中でぶるんぶるんと揺れている。
「何かイヤなんだけど」
「情緒不安定がすぎる、こいつ怖い」
「おおん? なんか文句あるのか? アケミにも同じことやって」
「え」
何驚いた声出しやがる。
「アケミは私の親友なのー! 同じようにネジ緩めてー!」
クルンとイケメンに戻ったジェイが頭をポンポンしてきた。やめろ! 私はそんな事で絆されんぞ!!
「そっか、君はヒロインだもんね。僕もその影響を受けているのか……」
何かジェイが言ってるけど無視無視!
「アケミのネジも緩めろー!」
「はいはい、わかったよ」
「やったー!! カナちゃんありがとうー!」
ウキキィ! って鳴きながらジェイの周りを二人で回った。何だ、コイツ話せば色々やってくれるじゃん。流石天使。
アケミの後頭部にもブッスゥ! ってドライバー刺されてグリグリされてる。客観的に見たらただの殺人現場では?
「ひゃー! なんかいい感じー!」
「だよね! やったねアケちゃん!」
「おいやめろぅ!」
二人でハイタッチして笑った。
「本当に仲良いね君たち」
ジェイは天使みたいな極上の笑顔で私たちを見てた。いや、天使なんだけどさ。
このテンションで書き続けるの無理じゃね? と思いました。