第9話 作戦会議
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このようなニッチな拙作にも8日でPVが500を越えました。
おかげさまで8日連続投降の活力となっております。
興味を持っていただき、重ねて、お礼を申し上げます。
特訓が続いたある日の放課後。
帰りの会を終えて、4年1組の教室に行くために廊下に出ようとした。
「たっちゃん、今日は遊べる?」
と友だちのお誘い。
大会参加が決まってから、この友だちとのお誘いは毎回断っているんだけど・・・・
「ごめん、今日もダメなんだ?」
「そうなんだ? 最近ずっと忙しいね?」
と、心配してくれる。
「将棋の大会に出るんだ。少しでも勝ちたくて特訓してるんだ」
と友だちの気持ちに申し訳なくて、理由を話した。
「へぇ、将棋大会に出るんだ。だから最近強くなったんだね。わかったよ、終わったらまた遊ぼうね」
と、応援してくれた。
「ありがとう!」
僕はとても嬉しくなった。
友だちと別れて、4年1組の教室に着いた。
「よし、今日も頑張ろう!」
高槻さんの一声で今日も対戦がはじまった。
「水無瀬君、大分と強くなったね」
負けてしまったけれど、茨木さんは僕にこう言った。
実は特訓から帰ってからも、本を読んで、詰将棋や戦法の研究も頑張っている。
相手の戦法によって駒組を変えることや、戦法は後手番が選ぶ、ことくらいは分かった。
また、振り飛車の方がアマチュアには研究をしやすいことも。
けれど、僕は【居飛車】のままだ。
対居飛車には【矢倉棒銀】、対振り飛車には【船囲い・四六左銀戦法】を採用している。
おかげで3週間経った頃には、高槻さんと茨木さん相手にたまに勝てるようになった。
「これ以上強くなるのはどうしたらいいのかな?」
僕は高槻さんに聞いた。
「うーん、今のうちは詰将棋、次の一手、実践の3つかな」
と高槻さんが答える。
「詰将棋と次の一手は本で大丈夫。おススメの本を明日持ってくるよ。貸してあげるね」
茨木さんが続けて答える。
週末になる。大会までの最後の週末だ。
将棋教室に3人で待ち合わせ。
先週、教室で級認定をしてもらった。
「10級」だった。
これはかなり速いペースらしかった。
今日も先生と友だちとたくさん指した。
この中にも来週の大会にでる子もいるようだ。
団体戦はみんな強い人だけがでるようなイメージがあるんだけれど、将棋はそうではないらしい。
個人戦でも級・段別にクラス分けをされるのがほとんどだ。
日本人の約半分が6級くらいらしく、初段以上になると将棋人口の1割程度らしいのでクラス別をしなければ、参加者が増えないのだ。
しかし、級・段位は自己申告制なので、強くても級・段位を知らないものや、実際の級・段位よりも低く申請し優勝しやすいクラスに参加する人もいる。
特に段位は数万円と言ったお金がかかるので、目的もなければ認定をもらおうとする人がいない。
剣道や柔道と違って、段位があまり信用ならない競技も面白いね。
さて、先生が僕にアドバイスがあった。
「水無瀬は攻めたくなっても、危ないと思ったときは一旦呼吸したらいい。その後、攻めるも守るも自由だ。できれば、1手5秒はかけてほしい。それが上達の近道だよ」
「1手に5秒かけるんですね」
「そう、ただ大会は20分切れ負けだから、時間配分には注意だね。今週は友だちとは時計を使って対戦するといい。慣れは大事だよ」
「わかりました」
この日は10局以上対戦した。
制限時間のある勝負は本当に難しいんだ。
有利な時は時間は余るし、不利な時はすぐに時間が足りなくなる。
凄く新鮮な1日だった。
「先生、時計を貸してくれませんか?」
帰り間際に高槻さんがお願いした。
「来週大会だしね。いいよ」
と、気軽に貸してくれた。
最後の週も諦めずに特訓を繰り返した。
そして大会前日の放課後、いつものように3人で4年1組に集まった。
「今日は明日の作戦会議だよ!」
高槻さんが黒板に「作せん会ぎ」と大きく書いて、教卓の前に立っている。
「「おー!」」
と生徒用のデスクに僕と茨木さんが座る。
「予選が4組のリーグ戦で上位2チームが決勝トーナメント。目標は予選突破だね」
高槻さんが目標を立てる。
「だいたい20チームくらいでるんじゃないかな」
茨木さんが説明を加える。
「団体戦には、三将・副将・大将の役割がある。順に1番手、2番手、3番手って感じだね」
と高槻さんが教えてくれる。
「だれがどれになるかが大事だね」
と茨木さん
「僕は最初じゃないの?」
僕は疑問をぶつける。
「基本的には弱い順でいいんだけれど、もちろん相手も対策してくるらしいわ」
茨木さんが答える。
「私は3級、優ちゃんが2級、水無瀬君が10級、これが戦力ね。優勝までは正直難しいと思うけれど、皆1勝したいよね」
「僕は勝ちたいね」
高槻さんの声に僕はこう答えた。
「なら、三将は私、副将は水無瀬君、大将は優ちゃんでいこう」
「ダメ。大将は高槻さんがいくべきだよ。今回のキャプテンは雛ちゃんなんだから」
「うん、僕も高槻さんが大将でいいと思うな」
「そう? 私が大将なら勝てないよ?」
茨木さんと僕が高槻さんを推すと、高槻さんが珍しく弱気になった。
「皆、基本的には勝てないよ。だから、作戦を練るとしても大将だけは雛ちゃんがいいな」
「わかったわよ」
茨木さんの後押しに、高槻さんは嬉しそうだ。
「よし、じゃあ。優ちゃん、水無瀬君、私の順でいこう!」
「「おー!」」
順番は決まった。
さて、次の作戦は・・・?
「ほかの作戦? 無いわよ? あとは今夜は早く寝て明日に備える! 以上!」
「「おー!」」
自宅での夕食。
「たっちゃん、明日は大会ね。こういうの初めてでしょ? 緊張してる?」
とママの声。
「うん、どきどきが止まらないよ」
「私も緊張してるよ。我が子が大会に出たいって言うんだからね。負けてもいいから楽しんでおいで」
「がんばるよ!」
「おにーちゃん、がんばれ」
「ありがとう」
「で、明日は10時だっけ? 8時には起きなさいね」
「うん!」
お風呂に入って、宿題やって、将棋の本を眺める。
歯磨きの後、ベッドに入った。
なかなか眠れない。
高槻さんや茨木さんの前でいいところを見せられるといいな。
そんなことを考えていたら、いつの間にか朝になっていた。
さぁ、勝負の時だ。
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