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小学生が上級生お姉さんに誘われ将棋を習い始めました  作者: 水無月 右京
第1章 小学生編(将棋との出会い)
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第5話 初めての下手(2枚落ち)

ご覧いただきありがとうございます。

私以外の方がご覧になっている事実、震えるくらい嬉しいというのは本当なのですね。

しかも、日に日にPVが増えています。興味を持っていただき、重ねて、お礼を申し上げます。

盤面に駒を並べる。

「水無瀬くん、“玉将”と“王将”の違いをよくしっているね」

不意に高槻さんが言った。

「ん?なんのこと?」

「あはは、たまたまかー。えとね、普通、“王将”は強い人か初対面なら年上の人が使う駒なんだよー。だから、何のためらいもなく“玉”をもっていったから、感心したんだ」

「へー、そうなんだ。まったくしらなかったよ」

「今後、意識してみるといいよ。将棋って、意外と礼儀にうるさいから」

「わかった、ありがとう」


並べ終えると、高槻さんは自分の飛車と角の駒を箱に直した。

「2枚でいいかな」

「高槻さん、何しているの?」

初めての経験に理解が追い付いていない。

「ああ、“駒落ち”も初めてだったか。実力差がある場合、強いほうが駒を落として勝負するんだよ。お互い本気で指せるから、その方が面白いの」

「ハンデかあ・・・」


ハンデをもらうのはなんか嬉しくない。

相手は自分より強いです、とアピールしているのだ。

これで勝つのが普通で、負けたら余計にへこむ。

これもまた、受け入れがたい感情を生んだが、お姉ちゃんが教えてくれているのだと、なんとか感情を沈めた。

「わかったよ」

「うん、じゃあ、先手はもらうね」

「「お願いします」」


上手(高槻さん)初手6二銀。

初手に歩を動かさないのが違和感だ。

一手で相手がとてもつよそうな重圧を感じる。

何をさせばいいのだろう?

わからない。


「水無瀬君は自分の将棋をしたらいいんだよ」

高槻さんがそうアドバイスをくれる。

茨木さんは興味深そうに僕を見ている。


自分の将棋。

【矢倉棒銀】をやってみよう。

下手(僕)の初手は7六歩。


「うん、いいと思うよ」

茨木さんが頷いた。


あれ?茨木さんも将棋を知っているんだ。


3手目上手5四歩。

4手目下手6六歩。

・・・

駒組が進んでいく。

上手は玉を三段目にある。どうやって攻めてくるんだろう?

こちらも矢倉は完成し、飛車先の歩をついた。

「攻めよう」

いよいよ、7八銀と棒銀の銀を繰り出す。


相手の攻めは7筋の歩の交換をしてきたくらいだ。

7三にいる桂馬が少し気になるくらいだけど、大駒がないので警戒しすぎることもないだろう。

本に書いてあった【棒銀戦法】を成功させるための3五銀もできている。

6八に角がいて、5六歩としており2四の地点で一気に攻められる。

だから、この戦法は必ず成功するだろう。

そう思って、2四歩と攻勢にでた。

相手は当然同歩。

同銀として「勝った」と心の中でガッツポーズ。

その次の手、上手2三歩。

もちろん、同銀。上手同銀。

そこで気づく。同角とできない、と。

「ミスしてる!」


相手の銀を取り返せないので、こちらの銀が損したことは確定した。

「ど、どうしよう・・・?」

動揺を隠しきれず、2四歩と持ち駒を使い銀取りを主張する。

上手は3四銀とひらりと躱す。

2三歩成は同銀で意味がない。

それでも相手の銀を取り返そうと3六歩と伸ばす。

上手2二歩とがっちりと守る。

3五歩とさらに銀取りをアピール。

上手同銀、下手同角があるので、この歩は取れない。

なので、上手は4五銀とさらに躱しながら攻めてくる。


確認するが、相手には飛車角といった大駒がない。

で、4五の銀は孤立している。

盤面上だけなら、銀はとられたものの僕が絶対有利なのは間違いない。


だ、だけど・・・

相手をみる。高槻さんは真剣な目つきで盤を見ている。

こちらの視線に気づき、顔を上げ、僕を見て静かに微笑んだ。


勝てる気がしない。


それでもなんとか食い下がって手数が増えていく。

飛車と角を成り込んでなんとか相手玉に迫っていくが、巧みに前へ前へと逃げられる。

一方で、僕の矢倉囲いは歩と桂馬と銀を巧みに使われて、気が付けば囲いが破られていた。


「参りました」

僕は頭を下げる。


「ありがとうございました」

高槻さんも頭を下げる。


悔しい、というよりも強烈すぎる格の違いに圧倒されて放心状態になっていた。


「水無瀬君、なかなか強いね。初心者とは思えないよ」

さっきとは違ってにっこりとしている。

「序盤はしっかりできていたね。ミスに気付いた後の数手は動揺してボロボロだったけれど」

横で見ていた茨木さんもそう褒めてくれた。


「いやあ、高槻さん、すごく強いね」

心から思ったことがそのまま言葉にでた。


「うーん、2三銀はもったいなかったね。こっちの2三歩には、3五銀と引くだけで十分だよ。私には大駒がないので、君から駒をもらわないと攻められないんだ。そこを修正されるだけで多分私はもう勝てないよ」

「そ、そうなの?」

「うん、正直、私が銀得したところでまだまだ修正はできました。ミスであせっちゃったね。だから私が勝った」

「うーん?」

「あれ?あんまり信用されてない?じゃあ、もう一局指してみよう。次も負けるのは嫌だから本気でやるね」

「わかった。お願いします」

「駒は取られても大丈夫。自分を信用して。じゃあ、お願いします」

茨木さんも僕を見てうんうんと頷いた。


2局目がはじまった。


序盤はさっきと同じ手順、同じ盤面。

さっきと同じように僕は2四歩と突く。

上手は当然同歩。こちらも同銀。上手2三歩。

これを3五銀と引く。

そこで少々時間があく。高槻さんは指しにくそうだ。

そこではっと気づく。

相手の持ち駒は7筋で交換した歩1枚のみ。

攻めるにも、僕の矢倉囲いがしっかりと上部を守っている。

高槻さんは玉を動かした。


何を狙っているのだろう?

狙いがわからないので、こっちは攻めに行く。

【棒銀】はできないけれど、どうしようかな。

盤面をいっぱいながめる。攻めるためには駒を増やさないと。

使えそうな自陣にある駒は金、左銀、右側の桂馬、香車、歩。

金、左銀は矢倉の守りで使っているので使えそうで使えない。

桂馬ははねてもいいかもしれないが3七の地点には初期配置の歩がいる。

香車はいまのところ役に立たないな。


歩か。


3六歩と桂馬を動かすことも考えて歩を突いた。


(水無瀬君、強い・・・)

歩を見て、高槻はそう考えていた。

もちろん、平手で水無瀬には負けないだろう。

今は2枚落ちの上手。

上手の心情としては、「相手にミスをさせ」たいところ。

そのため、相手に攻めさせて、受けきる。

これが必勝パターン。

だから、攻めなかった。いや、高槻のスキルでは小駒だけでは攻められない。

玉を右左と2か所を行き来させながら、相手の動きを待つしかないのだ。

攻めて失敗すれば、必負につながる。

攻め方を間違える=駒損をする、ということだから。


遊びの将棋だとは思えない緊張感が二人を支配する。

その緊張感が2人をこれまで以上の集中力を高めるのに一役買う。

勝てばもちろん楽しいのだが、それ以外の楽しさに水無月は無意識ながら感じていた。


「今、楽しい」

僕はそう感じた。

一手に時間がかかる。

放課後だから、チャイムを気にする必要はあまりない。

桂馬を跳ねてみよう。7七桂を指す。

高槻さんは、玉をさっきの場所に動かす。

これは間違いない。

攻めてきていいよ、と待っているんだ。


攻めることに集中し、相手の布陣の隙をさがす。

僕も高槻さんも、お互い1手に20秒ほどかけているようだ。

高槻さんの指す手は僕の想像を超えている。


さっきは僕が勝てるといってくれたけれど、ほんとうにそうなのかな。

相手を信じて、攻めてみよう。


相手の守りは2二銀、3二金、2一桂で3三歩と2三歩を守っている。

3五にある銀を2六に下げ、2五銀と手数をかける。

3筋の歩を3五まであげる。

4五に桂馬を跳ねて、3三の地点を歩、桂、銀、角で攻めてみよう。


・・・


「参りました」

10分後、高槻さんがそう言った。



ご覧いただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 王将と玉将の違い、知りませんでした、なるほど、王将は目上の人が使うものなんですね、勉強になりました、 あと、物語に関係ない話で申し訳無いのですが、大学の第二外国語でロシア語を学んでらしたん…
感想一覧
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