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第23話 ペア将棋

ご覧いただきありがとうございます。

おかげさまで8日連続3桁PVです。

本当に感謝感激です。

そうちゃんが昼休みの将棋に参加し始めて早1ヶ月が流れた。


始めは、そうちゃんの参加に、高槻さんは少しだけ不満げだった。

茨木さんと僕の勧めでしぶしぶ了承って形だった。


だけど、そうちゃんはすごく勉強熱心だ。

とある一局で僕と対戦してそうちゃんが負けた。


戦型は「相居飛車の相矢倉戦」だ。

これはお互いに矢倉囲いを組んで戦う内容なんだけれど、矢倉囲いは一番固い守りだと言われている。

それを先手、後手ともに組むことでじっくりとした、実力差が出やすい将棋なのだ。

将棋がプロ化して50年以上経つけれど、未だにプロ棋士の間でもこの矢倉戦はでてくる。


僕たちみたいら素人でも組めて、また、将棋の最強だといわれているプロでも指せる。

そんな奥の深い戦法の一つなのだ。


この戦型でそうちゃんが負けた。

次の日も僕と指すときは同じ「相矢倉戦」だった。

けれども、昨日よりも工夫を凝らす。

それでも2級になった僕が勝つ。

また次の日、同じ戦型でまた少しの工夫。


家でどれだけ勉強しているんだろうと指しながら、そうちゃんの根性に感心する。

負けても負けてもそうちゃんは楽しそうだ。


(これはまずい)


僕は基本的に「矢倉棒銀」のみで強くなってきた。

けれども、2級になると棒銀戦法が通用しなくなることが多い。


攻めが単純なので、受ける方は対策がしやすいのだ。

けれども、相手のミスで僕はたまに勝てる。

強くなりたいと思う気持ちはあっても、このたまに勝てるところで満足している自分がいた。


そうちゃんは確実に強くなっていくだろう。

それも僕のペースを越えて。


高槻さんもその姿勢に心打たれて、今では楽しくそうちゃんと将棋を指すことが多くなった。

その姿をみると、僕はとても嬉しいのだけれど、ときどき胸がちくちくすることも多くなった。


放課後は男同士で公園で遊ぶ。

高槻さん、茨木さんは他の習い事で忙しいみたい。

そうちゃんとも仲直りができたので、前以上に楽しいひと時だ。


みんなも以前よりも楽しそうだ。

こういう日がいつまでも続くといいな。


土曜日。

そうちゃんの将棋教室のデビューの日がやってきた。

最初と言うことで、そうちゃんのママも来ていた。

お昼ご飯はそうちゃんのママも高槻さんの所に行くようだ。


桜井将棋教室。

僕や高槻さん、茨木さんはもう慣れた手つきで受付を済ませていく。

そうちゃんたちは今日が初めてなので、受付から簡単な説明を受けていた。

そういえば、僕の場合、そんな説明なんかなかったなぁ。


「あはは、そりゃ、私たちが誘ったからね。親もいなかったし」

「たっちゃんは団体戦メンバーだったんだから特別だよ!」

と、高槻さん、茨木さんに言われると少々嬉しい。

そうちゃんも説明が終わったみたいで、手合いカードを作っていた。


「そうちゃん、何級から?」

僕は尋ねる。

「それがわかんねぇって。だから、適当に当ててくれるみたいだよ?」

「がんばってね」

「おう、当たったらよろしくなっ」

と、対戦を待つ。


どうやら、僕たちはバラバラの相手と当たることになったようだ。

とはいっても、僕の相手は顔見知り。

そろそろ、相手の得意戦法まで記憶できるくらい戦っている。


それくらい戦うと、負けた後の感想戦が面白い。

そのように指すと本当に勝てるんだ。

負けた方はその悔しさを覚えていて、勝った方はその嬉しさを忘れてしまう。

人は負けて覚えるって言葉、かなり信じていいかもしれない。


この日の僕の昇級はかなわず、そうちゃんは7級と認定された。



更にもう一カ月が経つ。

僕はなんとか1級に、高槻さん、茨木さんは二段、そうちゃんは5級になっていた。

初心者で10級から始めた僕は大会があったとはいえ、半年強でここまで来た。

高槻さんに言わせると「早すぎる」とのことだ。


けれども、僕は早く二人に追いつきたい。

始めたころと比べて確実に近づいていることはわかる。


昼休み、いつもの4年1組。


「今日はペア将棋をしましょー!」

と高槻さんがアイディアを出す。

「ペア将棋?」

「そ、2VS2で1手ずつ交代で指すの。テレビでやっていたので楽しそうだと思ってね」

「なるほど、雛ちゃん、それは楽しそうだね」

「俺が一番下手だけどいいのか?」

「そう君、そんなの関係ないよ。楽しんだもん勝ち!」

高槻さんは、そうちゃんのことを「そう君」と呼ぶ。

同じ年下なのに、これも少しもやもやだ。


そんな気持ちもお構いなく、グループが分かれる。

男子VS女子となった。

これは3年VS4年、また「居飛車」VS「振り飛車」ともなる。


これはなかなか楽しそうな勝負だ。

棋力差だけでみると、明らかに僕たちの不利だけどなんとかいい勝負がしたいな。


「お願いします」

先手は僕たちから始まった。

そうちゃんが一手指す。

「▲7六歩」だ。

後手の高槻さんも「△3四歩」と指す。

互いに角道を開けた。


僕の番だ。

「▲2六歩」と飛車先の歩を突く。

茨木さんは「△4四歩」と角交換を拒否し、飛車先の歩を受ける素振りを見せる。


駒組が進む。


僕の予想通り「居飛車(船囲い)VS四間飛車(本美濃囲い)」の戦いになった。

「たっちゃん、対四間飛車の得意戦法は何?」

と、そうちゃんがきいてきた。


「えとね・・・・」

と、僕が言いかけた時、

「だめだよ、相談は。ペア将棋じゃなくなっちゃう」

と、高槻さんが諫める。


「ああ、ごめんよ。そんなつもりはなかったんだ」

そうちゃんが謝る。


(そうか、自分の攻め方ができないかもしれないんだ)

高槻さんの一言で戦術について、そうちゃんと息を合わせる必要があることに気づいた。


僕の得意戦法は「4六(左)銀急戦」というものだ。

左の銀を攻め駒として活用する。右の銀は飛車成を防ぐ布石だ。

でも、そうちゃんは・・・・と、心配になりながら、そうちゃんの一手を見守る。


右の銀を「▲3七銀」と上げた。

これは、この銀が4六に上がれば、「4六(右)銀戦法」、2六に上がれば「棒銀戦法」となる。

それぞれにメリットはあるけれど、その選択肢を僕に委ねたらしい。


対する高槻さんは「△1二香」と指した。

これは、将来の「▲1一角成」をする際、香車を取られることを防ぐ意味、そしてこっちが本命だけど、「手待ち」という、「攻めてきなさい」とアピールしているのだ。


(さすが、有段者は強い)


級があがると分かったことがいくつかある。

まず、級位者(級をもっているもの)は、攻めが荒く間違えることが多い。

正しく受ければ、受ける方は駒得を約束される。

勝つためには「相手に攻めさせる」選択も考える。

だけど、「受け」は将棋においてかなり難しい技術だ。

それでも、高槻さんは「私たちなら受け切れるよ」と言っているんだ。


男の子として、また先手としてしかけなくては思った。

そうちゃんを見る。

そうちゃんも「うん」と頷いた。


(ならば!)


僕が指したのは「▲2六銀」と「棒銀戦法」選択した。

四間飛車の4筋の飛車の位置以外の筋から攻めると攻めきれると判断した。

もちろん、最後まで読み切ってはいないので今後どうなるかはわからない。

高槻さんも茨木さんも僕のこの戦い方は受けたことがないはずだ。


相手が「居飛車」ならば、僕もそうちゃんも「棒銀戦法」が得意だ。

さぁどうなるんだろう?


茨木さんは迷っている。

棋力の総合力の優位は自覚しているだろう。

きっと、僕たちがどんな戦い方をしても「勝てる」と思っているかもしれない。


(本気だ)


僕とやる時以上に時間をかける。

次の手は茨木さん自身が指せない。

自分の一手の意味を次の高槻さんに伝わるか、これも確かに不安だ。


そして、指した手は「△2二飛車」。

飛車を守りに使った。


皆が頷く。

これはとても長い将棋になりそうだ。

自分一人で指すよりも仲間の指すことを考えて息を合わせることを考える。


(これ面白い)

きっと、4人とも感じたことだろう。


この日は残念ながら決着の前にチャイムが鳴って引き分けになった。

ブックマーク、評価、感想、ありがとうございます。

見える形の評価はかなりのモチベーションになります!


ペア将棋について、将棋のルールがわかり4人以上あつまればぜひしてみてください。

チェスクロックがあれば、20秒くらいでやるとなお楽しいでしょう!

普段と違う戦い方を強制させるので棋力UPにもお勧めです。


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