第21話 昇級
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5日間連続でPVが3桁になりました!ブックマークも2桁になりました。
初心者の作品としては嬉しい限りです。
今回は将棋教室のシステムの説明が多いかもしれません。
もちろん、他の形態もあるでしょうが、私の通うところはこういうところが多いです。
正式に桜井将棋教室に通うようになって1カ月が経った。
朝9:30に高槻さんの家に、茨木さんと3人で集合し、教室のあるショッピングモールに向かう。
10:00から教室のスタートだ。
受付時に会員カードを見せて手合いカードってのをもらう。
これで他の子どもたちと対局し、白星を増やしていくみたい。
同じ級同士なら、振り駒で先手を決める。
1級差なら、級の低いほうが先手、2級差なら級の高いほうが香車を落とす。
次に角、飛車、飛車香車、2枚、4枚、6枚・・・といった感じで落とす。
今日も将棋教室はたくさんの子供たちがいる。
ざっと見たところ50人くらいかな。
半分が初心者、半分が経験者みたい。
僕は10級なので、僕と同じような級の子と対局する。
8級~12級だ。
学校でも高槻さん、茨木さんとたくさん指しているのでこの級の子には負けるイメージはない。
実際に勝ち星を伸ばしていく。
チェスクロックは希望すれば30分切れ負けで使えるけれど、子ども同士で1時間もかかる将棋はなかなかないので使っている子はほとんどいない。
茨木さんがたまに使っているのを見るくらい。
午前中でだいたい5局くらい指す。
お昼になったら一度高槻さんの家まで戻る。
そこでお昼ご飯だ。
僕と茨木さんはお弁当を持参し、お茶をもらって食べる。
「たっちゃん、午前中どうだった?」
高槻さんが聞いてくれる。
「えとね、5連勝したよ」
「おー、次は昇級戦だね」
と、茨木さんが教えてくれる。
「昇級戦?」
「9級に上がるための1戦だよ。ちょっと強い子と当たると思うよ」
「茨木さんとか高槻さんとか?」
「あはは、私や雛ちゃんはないと思うなあ。私たちも昇級が近いから」
「へー、そんなシステムがあるんだねー」
どうやら、次は大一番みたい。
気合を入れて頑張ろう!
将棋教室には休憩時間はないので、食べて少し休憩したら、また教室に戻る。
そして、対局の再開。
「水無瀬君、次昇級戦だね」
と受付の人に言われた。
茨木さんすげー、よく知ってるね!
昇級のかかった一局は6級の子だった。
手合いは相手の「飛車落ち」。
駒を落とした方が「上手」となり、そのまま先手となる。
強い相手の駒落ちの戦い方ってのもあるらしい。
けれど、「たっちゃんはいまはそのまま戦ったらいいよ」と高槻さんの教えもあるのでそれを守る。
実際、対戦した相手はハンデなしなら僕よりきっと強い。
けれど、ハンデなしで高槻さん、茨木さんの方がずっと強い。
そんな人たちと毎日のように相手をしてもらってたら、負ける理由がないよね。
でも、油断はしないでおこう。
対局が始まる。
上手に飛車がないので、基本的に攻撃力は激減だ。
相手からの速攻はほぼないのでじっくりと攻め方、囲いを完成させる。
(僕のペース・・・・)
得意の「棒銀」で攻めていく。
失敗したら仕切りなおせばいいよね。
駒損だけはなるべくしないように。
・・・・
結果だけ見たら、僕が勝った。
そして、
「昇級おめでとう」
と受付の人が祝ってくれて、級認定カードをもらった。
「続けて対戦する?」
と聞かれたので、迷わず
「はい!」
と答えた。
振り返ると、高槻さん、茨木さんが来てくれていた。
「「おめでとう」」
と、高槻さんは右手をサムズアップ、茨木さんは両手を合わせながら言ってくれた。
「ありがとう」
昇級って嬉しいね。
◇
そこからしばらく月に一、二度のペースで昇級できるようになっていった。
基本的には負けないんだけど、昇級の一番でちょっと強い相手がでてくると負けてしまう。
そうすると、また何連勝かしなくちゃならない。
この歯がゆさがたまらない。
また、いろんな子と指すのが楽しい。
僕は居飛車で戦うけれど、対戦する相手によって戦い方が全部違う。
相手も同じ居飛車だとしても、角換わり、横歩取り、相掛かりと幅が広い。
戦法は後手が決める。
先手は先にさせるけれど、後手は相手の動きが見れるので得意な受け方を選べるんだ。
それでも、人間VS人間の対戦では先手が勝ちやすいのは事実みたい。
こういうのも面白いね。
※実際、作者も先手の方が勝率が高いです。
2級になった。
その間に高槻さん、茨木さんともに初段になっていた。
「ようこそ、2級へ。これでこの教室でも私たちとも当たりやすくなったよ?」
高槻さんは歓迎モード。茨木さんも嬉しそう。
これまでの間もこの二人とはたくさん指した。
大会直後のまったく勝てなかった時から比べて、本当に時々勝てるようになった。
僕が勝つと高槻さんは
「ぐぬぬぬぬ。もう一回よ!」
とむきになるのに対し、
「強くなったねー。かっこいいねー」
と、茨木さんは褒めてくれる。
仲良くなると、それぞれの性格もわかってきて楽しい。
将棋教室の友だちも随分と増えた。
それにこのことは僕の自信以外にもいい影響をくれていた。
成績が上がったのだ。
たまにある小テストでは常に満点がとれるようになった。
勉強時間、宿題をやる時間、塾に行く時間は変わってない。
将棋をやっただけで、これまで80点くらいだったのが、一気に上がった。
これにはママもかなり嬉しそうだった。
「たっちゃん、よくがんばったね」
と、褒めてくれるんだけれど、僕自身変わったことはしていない。
嬉しいんだけど、何とも言えない気持ちも残る。
「将棋、とても楽しそうね」
「うん!」
これには自信をもって言える。
また、鬼ごっこや野球もうまくなったと思う。
これまで何も考えず直感で行動していたんだけれど、相手の動きをよく見るようになった。
将棋で勝つのとよく似ているね。
毎日が楽しい。
そう思うと、周りの世界もみんな僕の味方なんだと思うようになった。
そんなある日、
そうちゃんから急にこんなことを言われた。
「たっちゃん、お前最近生意気だな」
その日から一緒に遊ぶことはあっても、直接話することは随分と減った。
鬼ごっこでは絶対に僕の所には向かってこない。
そうちゃんはリーダーだけど、周囲の友だちの声もあって仲間はずれにはならなかったみたい。
ありがたかったけれど、ショックだった。
心当たりが何もない。
だけど、そうちゃんには嫌われた。
よくわからない。
夜のベッドの中でもなぜ嫌われたのかわからなくて泣いていた。
将棋教室でもまったく勝てなくなった。
「たっちゃん、どうしたの?」
「なんにもないよ?」
「そう・・・・」
ママの心配の声が辛い。
どうやって相談したらいいのかわからない。
そうちゃんに嫌われてから2週間ほど流れた。
昼休みの4年1組の教室、いつものように3人で将棋を指していた。
「参りました」
僕が投了の合図をだした。
「ありがとうございました」
茨木さんが頭を下げる。
「たっちゃん、最近どうしたの? 将棋弱くなってるよ?」
と、横で見ていた高槻さんに言われた。
「弱くなった・・・・?」
この弱くなった、てことばが辛くて僕は思わず泣いてしまった。
「え? 泣くの? ごめん、そんなつもりじゃないの」
と焦る高槻さん。
茨木さんも心配そうだ。
周りの4年生も近づいてきた。
「よくわからないの。なんでしょうちゃんに嫌われたのか・・・・いっぱい悩んだんだけど、よくわからない」
「しょうちゃん? 誰なのその子?」
自分のせいで泣いた訳ではないことがわかって安心したのか、高槻さんは親切に話を聞いてくれる。
「この前、しょうちゃんに「最近生意気だ」って言われてお話しできない。嫌われることをした覚えがないのに嫌われて、どうしたらいいのかわかんないんだ」
と、ひくっひくっと肩を震わせながら言った。
「そう、悩みがあったのね」
と、茨木さんが優しく撫でてくれる。
その間に他の4年生が先生を連れて切れくれたみたい。
僕たち三人は教室から離れ、別室で先生と話をすることになった。
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